ボルソナロ大統領は1日、国家治安維持法を廃案とする法案を裁可したが、自身にも関係する「フェイクニュース」「軍隊」など5点に対して拒否権を行使した。2日付現地サイトが報じている。
国家治安維持法は、軍事政権時代末期の1983年に制定された法律で、軍政批判などを取り締まることを目的としていることが背後に感じられる〝軍政の遺物〟として知られていた。
この法は民政復帰後も長年、廃案にされておらず、今年2月、ダニエル・シルヴェイラ下議が、「最高裁判事を全員更迭」「軍政令第5条(AI5)の擁護」などを行った際は、最高裁がこの法律を適用して逮捕に踏み切っていた。
その一方で、市民のデモでよく使われている「コロナ対策を怠ったボルソナロ大統領はジェノシダ(大量殺戮者)」などの言葉にも、連邦政府側からこの法を適用しようとする動きがあり、問題視されていた。そこで、同法を廃案にし、現状に即した形で治安を脅かす人物や出来事に対処する法案を刑法につけ加える修正の動きが連邦議会で起こり、8月までに下院、上院が承認。ボルソナロ大統領の裁可待ちとなっていた。
大統領は、国家治安維持法の廃案そのものには賛成した。だが、刑法に追加される形の新法案から「フェイクニュース」「デモ」「軍隊」「公人」「政党活動」の五つに拒否権を行使した。
大統領は「虚報を大量拡散した者は罰する」に対しては、「何を罰するのか具体的にわからない」、国民を政治的な討論から遠ざけ、選挙時の選択肢を狭めるなどと反対理由を説明。「平和なデモを妨害する者を罰する」には「平和の定義がわからない」とした上、抗議活動鎮圧のための軍発動の可能性を認めた。
また、暴力や武器を使用した軍人や公人の解雇などにも難色を示し、民主主義的を脅かすような行為に参加した人物に反対する行動を政党が起こすことを認める項目に対しても反対した。
ボルソナロ氏は最高裁が管轄する「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)」捜査の対象となっており、自身もコロナウイルスや過去の選挙での不正行為に関する虚報拡散を問題視されている。
大統領による拒否権は、30日以内に上下両院で合同審議が行われ、最終判断が下されることになる。