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空しさ残る、ジウマ罷免から5年の月日

ジウマ氏(Fabio Rodrigues Pozzebom)

ジウマ氏(Fabio Rodrigues Pozzebom)

 8月31日でジウマ大統領の罷免から5年が経過した。その間、ブラジルにもたらされた「成長」は果たしてあったのかどうか。
 今、振り返っても、あのときの罷免が仮になかったとしても、労働者党(PT)政権は終わっていたような気がコラム子にはしている。2013年のサッカーのコンフェデ杯のときの連日のデモとラヴァ・ジャット(LJ)作戦で国民の欲求不満は頂点に達していたし、そうした怒れる国民をなだめるだけの経済成長も期待できなくなっていた。2003年からの長期政権にほころびがあったことは事実だろう。
 だが、その政権を終わらすためのやり方を思い返すに、やはり空しさしか残らないのがコラム子の本音だ。「果たしてあのとき、〝政権交代〟を叫んで立ち上がった人たちが求めていたのは本当に〝正義〟だったのか」。そう考えたときにハッキリと「ノー」としか言えないからだ。
 その「正義の象徴」とされた、LJ作戦そのものからしてそうだった。メディアは当時のセルジオ・モロ連邦判事を英雄として、「LJから伯国の未来がはじまる」かのような物語を連日のように国民に夢見させた。
 だが、5年が経過した今、そのLJのイメージが地に落ちている。モロ判事とパラナ州検察局のLJ班が癒着していたこと、モロ氏が捜査対象を政党で選り好みしていたこと、さらにはLJ主任のデルタン・ダラグノル氏がルーラ氏の裁判前からモロ氏の後任判事から裁判前に判決予定を事前に聞き出していたなどの無法ぶりが、ハッカーの盗聴によって暴露されたからだ。今やLJが世間の話題になることもかなり少なくなってしまっている。
 そして、ジウマ大統領罷免を求め、18年大統領選でボルソナロ氏を支持していた人から盛んに聞かれていた「政界浄化」の声もいつの間にか聞かれなくなっていた。ボルソナロ氏長男のラシャジーニャ疑惑やミリシアとの関係、虚報拡散によるネット捜査などに加え、今や大統領自身がコロナワクチンに関しての不正に関与している疑惑まで浮上している有様では、それも仕方が無い。
 だが、それでも支持している人が一定数いるのは、肩身が狭かった「軍人」「企業家」「福音派」の人たちの気持ちを代弁するものとして機能したからだろう。
 だいたい最近では、ジウマ氏の罷免請求書の作成者の1人であるジャナイーナ・パスコアル氏まで「麻薬常用者に食事を与えることは犯罪者を助ける行為」などと呼ぶ始末だ。「どういうつもりで罷免請求を出したのだ」と呆れてしまう。
 こうして5年を経た現在、LJの実刑判決で服役していたはずのジウマ氏の親玉ルーラ氏が、選挙出馬に差し障りがない状態になり、大統領選の支持率で圧倒的優位に立っているのは皮肉な話だ。(陽)