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キノコ雑考=ブラジルに於けるキノコ栽培の史実とその背景=元JAIDO及びJICA 農水産専門家 野澤 弘司 (19)

 尚このアガリクスの人工栽培の成功には台湾系キノコ村の長老,呉換竜の協力も特筆に値する。呉は同時に先見の明でキクラゲ栽培試験に挑んでいた。呉のキノコ栽培への不屈な挑戦の気骨が偲ばれる古本との往復書簡を70通ほど、私は現在も保管している。
 何はともあれ古本のアガリクスの人工栽培成功については、後日、当寄稿文の巻末に添付した橋本梧郎植物分類学者が、1985年1月21日付サンパウロ新聞に寄稿された「古本氏のこと」、更に2000年5月17日には日本の業界紙の依頼で寄稿した「ブラジルのキノコ事情」の巻頭紹介文に「野澤弘司君のこと」として、古本の1972年の快挙を明記し証言している。
*)1973年;瓜生と野澤は、古本からアガリクスの子実体をもらい受け、種菌を組織培養してアガリクスの人工栽培を導入した。当時の栽培様式は太陽の間接光線をより多く吸収させる為、また菌舎の建設費が嵩むので当初は露地栽培が多かった。しかし露地栽培は病虫害や小動物からの被害が多く、また豪雨や乾燥などの自然環境の影響をもろに受け、単位面積当りの収量も菌舎栽培には及ばず、10月〜4月の夏場の菌舎内での棚式袋詰め栽培が漸増した。
*)アガリクス栽培者の多くはマッシュルーム栽培経験者なので、アガリクス栽培への新規導入と移行は円滑に行われ、アガリクスの種菌の多くは台湾系のキノコ村から供給された。
*)同年頃;当時のブラジル国内ではアガリクスの薬効は、巷には未だ充分に浸透して居らず、古本はアガリクスをスライスした乾物を滋養強壮の健康食品として、リベルダーデ区の書店、ノンキ堂で販売し好評を得た。顧客には斉藤ヒロシ、サンパウロ大学教授等もいた。(談)
*)アガリクスの服用法;乾物アガリクス約15gを1リットルの水で約20分間煮沸した煎液を、150〜200ccずつ午前と午後に各3回に分け服用する。自己免疫機能を持続的に高める為、日常的には定量を長期間に及んで摂取するのが望ましい。
*)1975年;岩出研究所はいつインターネットに掲載したかは不明だが、世界で初めて姫松茸の人工栽培に成功したのは1975年と公示している。しかし我々ブラジルに於けるアガリクス栽培者、特に発見者の古本の心境を代弁すれば、元来理不尽な姫松茸の生い立ちは同研究所の顕示欲を露呈したアガリクスのパクリ生生品と看做しても過言では無く、現在に至っている。
*)同年;アメリカのE.B.Lambertによるアガリクスの抗癌作用に関する論文が発表された。
*)同年頃;日本の各研究機関に於けるアガリクスの薬理効果の基礎研究と臨床試験で裏付けられた実績評価の高い抗癌剤としての薬効が漸次判明し、サプリメント業界ではアガリクスの需要フイバーが加速した。即ち、アガリクスの最も顕著な薬効は免疫賦活作用の活性化に伴う、癌の発生予防と抗癌作用、癌や生活習慣病の対処薬剤治療効果の向上、癌の増殖抑制、癌の治療に伴う副作用の軽減、合成薬のような副作用は無く、糖尿や高脂血症等の生活習慣病の予防の特効薬である。
 即ち化学合成された薬とは異なり癌細胞を直接死滅させるのではなく、人間の体内に備わっている自己免疫機能を活性化させる事で、間接的に癌細胞を撲滅させるのがアガリクスに潜在する特異性である。