ボルソナロ大統領は9日、BRICS首脳会議に出席し、世界貿易機関(WTO)の近代化のためにはBRICS諸国の「協力の強化」が必要と説くと共に、「コロナ禍での防疫対策に中国の支援は不可欠」と述べたと同日付G1サイトやアジェンシア・ブラジルなどが報じた。
9日の会議には、ボルソナロ氏の他、中国の習近平主席、ロシアのウラジミール・プーチン大統領、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領、インドのナランドラ・モディ首相が出席した。今会議の議長はインドのモディ首相が務めた。
WTOの近代化に関する発言は、11月30日~12月3日にジュネーブで開催される第12回WTO閣僚会議を念頭に置いたものだ。ボルソナロ氏は、今こそが工業製品や農産物への補助金に関する基準を改定する時期だと考えている。
例えば、ブラジルは今年2月、2017年に始まったボンバルディア社に対する30億ドルの補助金に関するカナダ政府との係争を終えた。ブラジルは、カナダ政府が支払っていた補助金は、同規模の航空機を製造しているブラジルのエンブラエル社に損害を与えたと考えている。
ボルソナロ氏は、国連安全保障理事会の改革も早急に扱うべき課題だと主張した。ブラジルは以前から常任理事国入りを願っているがかなわず、2022年1月からは非常任理事国として同理事会に参加する事になっている。
BRICS会議の様子は最初の部分以外は公開されておらず、ボルソナロ氏の語った内容は大統領府のページで公開された。大統領は今回の会議で各国との二国間関係についても言及しているが、中国の習主席を意識し、「コロナ禍での防疫対策には中国の支援が不可欠」と中国を持ち上げた事に注目が集まった。
ボルソナロ氏や同政権の閣僚達は、新型コロナウイルスは中国が意図的に拡散したという中国陰謀論を繰り返した上、新型コロナワクチンのコロナバックの採用に関してもその有効性に疑いを投げかけ、採用に否定的な態度をとるなど、中国を敵対視するかの姿勢をとり続けていた。
だが、この日のボルソナロ氏はがらりと語調を変え、「中国の支援が不可欠」だから、今後も変わらぬ支援をと乞う姿勢を見せた。ブラジルが現在使用しているコロナバックやアストラゼネカ社製ワクチンは、中国から輸入した有効成分(IFA)を使用して国内生産しており、中国の存在を無視する事はできないからだ。ブラジルは中国から、人工呼吸器などの機材やマスクなどの個人防護用品も輸入している。
4月に行われた、米国のバイデン大統領主催の気候変動に関する会議の時も、手のひらを返すように、労働者党(PT)時代の環境政策をなぞったかのような温室効果ガス削減目標を提示するなど、日常の主張や態度とは異なった発言が行われた。だが、相手に合わせて言葉や態度を変えると見られれば、国際的な信用が揺らぎかねない。
今回の会議でも現実を前に態度を変えざるを得なかったとの見方があるが、いずれにせよ、今後の言動が注視されそうだ。