12日、全国で保守派勢力によるボルソナロ大統領に対する抗議デモが行われた。ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事(民主社会党・PSDB)やシロ・ゴメス氏(民主労働党・PDT)といった来年の大統領選への出馬が有力視されている候補者は勢ぞろいしたが、肝心のデモ参加者がどこの会場も不入りに終わり、「第三勢力」の台頭の難しさをうかがわせた。今回のデモは労働者党(PT)が参加せず、ルーラ元大統領への批判も目立った。12、13日付現地紙、サイトが報じている。
今回のデモは、ブラジル自由運動(MBL)とヴェン・プラ・ルアという、2016年のジウマ大統領罷免を求める抗議運動の際に活躍した団体によるものだ。今年に入ってからの反ボルソナロ大統領の抗議活動としては初めての保守派によるデモは、全国17州の州都をはじめとした人口の多い都市で開催された。
だが、PTをはじめ、社会主義自由党(PSOL)や中央労組(CUT)といった、これまでの反ボルソナロ・デモで主体となった団体が参加を拒否。これは、この2団体がジウマ氏の罷免のみならず、ルーラ氏のラヴァ・ジャット作戦での有罪を望んでいた人たちゆえに予想もされており、当初から人の入りが不安視されていた。
そして当日、蓋を開けてみたら、サンパウロ市のパウリスタ大通りにはわずか6千人しか集まらなかった。7日に同地で行われた親ボソルナロ派による抗議活動も不入りと言われたが、それでも12万5千人を集めていた。
これをはじめ、この日はどこも人の入りが少なかった。ブラジリアに至っては、100人ほどしか集まらなかった。
デモの内容の方も、ボルソナロ氏の罷免を求める一方で、来年の大統領選で支持率1位のルーラ氏がボルソナロ氏と共に逮捕されて監獄に行くことを望む人がいたり、ボルソナロ氏に好意的なテメル前大統領の復帰を望む人の姿が目立ったりなど、統一感に欠けたものとなった。
このデモにはブラジル社会党(PSB)や民主労働党(PDT)といった左派政党の政治家も参加したが、その中のひとりのタバタ・アマラル下議(前PDT)も、「このデモに行くことに関して左派の支持者たちから強く批判された」と語っている。
人の入りこそ少なかったが、パウリスタ大通りにはシロ氏やドリア氏、ルイス・エンリケ・マンデッタ氏(民主党・DEM)、ジョアン・アモエド氏(ノーヴォ)といった来年の大統領選の出馬有力候補が顔を揃えた。
この中でドリア氏は演台に立ち、現在のボルソナロ大統領の罷免を求める動きと、軍政終了前年の1984年に起きた大統領選の直接選挙を求める運動であった「ジレッタス・ジャー」を比較し、団結を求めていたが、ボルソナロ氏でもルーラ氏でもない「第三の勢力」をアピールするには物足りなかったと報じられている。
PTをはじめ、左派が中心となって行う反ボルソナロ・デモは10月2日に行われる。
なお、この日のデモには、ブラジル経済の動向を不満に思う投資家や大手の企業家らの姿も目立ち、現政権の経済政策への不満を募らせていることをうかがわせた。投資家や企業家の中には、「ボルソナロ氏を政権からどかせてくれるなら、ルーラ氏でも構わない」という言い方をする人もおり、複雑な心中をのぞかせた。
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