サンパウロ州消費者保護センター(プロコンSP)が15日、昨年11月から機能し始めた送受金プログラムPIXを悪用した犯罪が多発している事を受け、安全性確保のための措置を採るよう中銀に要請、対策をとるまではPIXで扱える金額を500レアルに制限するよう求めたと同日付G1サイトなどが報じた。
PIXは時間や場所を問わず、リアルタイムで送受金できる上、手数料もかからないため、運用が始まると同時に利用者が急増した。だが、この利便さを悪用した犯罪が多発し、電撃誘拐後に被害者に送金手続きをさせたり、信号待ちの車の窓を割って携帯電話を奪い、自分の口座に送金したりする犯罪が増えた。
事態を重く見た金融関係者や治安関係者が働きかけた事もあり、8月27日には中銀が、夜8時から翌朝6時までの個人や個人・零細企業(MEI)の口座からの送金上限額を、銀行間送金やPIX、デヴィットカードなどの合計で1千レアルとする事などを決めた。これは、PIXやカードを悪用した犯罪による被害をより小さく抑えるための方策だ。
また、顧客が夜間と昼間の送金上限額を増減額する権利も認めた。これにより、手続きから24~48時間で送金額の上限が変更される。
さらに、上限額以上の送金を受けられる相手を事前登録しておけば、強盗などが自分の口座に上限額を超えた送金を行う事ができなくなる。犯罪者が被害者に変更手続きを行わせる可能性があるため、上限額や上限を超える送金を受けられる相手の登録は24時間以上を経てから有効となる。デジタル方式での送金上限変更に24時間以上かかるのは、PIX以外の方法でも同様だ。
企業などがカードでの売掛金を予測するための現金やクレジットの動きを示す履歴発行も安全策の一つだ。
中銀は、PIXを悪用した送金は10万回につき6回位で、詐欺行為減少を示す数字は出ているが、犯罪的な利用急増の証拠はないとしている。
だが、プロコンはこの措置後も電撃誘拐や携帯電話強奪、それに伴うPIX悪用は減少しておらず、誘拐後の拘束時間が長引くといった傾向もあるとし、更なる安全策を講じる事を要請。それと同時に、新対策が採られるまではPIXによる送金額上限を500レアルにするように求めた。
また、送金履歴のない口座への送金被害を受けた顧客には、最低30日間の期限を切って被害額を差し戻すといった措置の導入も提案した。
プロコンは、新たな技術の開発や導入は大切だが、顧客の安全や損害賠償も考慮するべきとし、安全策や賠償の可能性は全国レベルで適用する事を望んでいる。
中銀は11月29日から、PIXを使える施設やATM(現金自動預け払い機)で、日中500レアル、夜間は100レアルまでの現金を引き出せるPIX Saqueや、買い物額を上回る金額の払い出しを支持し、差額分を現金で受け取るPIX Trocoというサービスを導入する意向だからなおの事、早急な安全策導入が求められているといえる。