買い物を終えて、駅に行った。もう午後6時過ぎ、駅は帰宅時間で混雑していた。
ブラジルでは公共交通機関はバスが多く、それか自家用車での移動が普通で、俺もそうだ。
ところが、日本に来てから歩きっぱなしで足が吊ったように痛く、歩くのが辛かった。来日して直ぐ買った安くてカッコ良かった靴も、変に俺を痛めているようだ。
俺とは対照的に日本の現代人は50年前と変わらず、足早で俺をどんどん抜いていく。
うぁ~、前方に階段が迫ってきた。「あっ、エスカレーターが有った。良かった!」
何とかエスカレーターに辿り着き、あ~良かった~。ところが、俺の後ろに長~い列ができた。
なぜだろう、皆がじっと俺を見ている。「う~ん、何なんだ」と頭を捻った。ブラジルなら文句があれば誰かがいってくる。
ここでも何か言ってくるだろうと、俺も皆を見つめ返して、挨拶(?)気味に少し頭を下げた。
だが、それに応えて返ってきたのは、嫌な沈黙と冷たい目線だけだった。
後で知ったのだが、俺が立っていたエスカレーターの側は、忙しく上る奴等の通る道だったそうだ。
エスカレーターは自分が上らなくても上れる物なのに、日本人は何故エスカレーターをわざわざ急いで上るんだ?