ホーム | 日系社会ニュース | 50年ぶりの祖国で〝浦島太郎〟(7)=サンパウロ市 広橋勝造=回転すしは〝楽園〟だ!

50年ぶりの祖国で〝浦島太郎〟(7)=サンパウロ市 広橋勝造=回転すしは〝楽園〟だ!

 甥の秀一郎さんが日本で回転すしの店に連れて行ってくれた。食べたい寿司が、目の前に「どうぞ、ご自由に盗って食べて下さい」とばかりに、グルグルと廻って来る。
 ここでは店員に何も言わずに、勝手に食べて(盗んで)良いのだ――。ブラジル生活50年の俺には考えられない光景だ。ここは天国の極楽か楽園だと思った。
 ここぞとばかりに、盗って盗って、盗りまくる。さて、満腹になって店を出る時、甥が4人分でウン万円の支払をした。あれだけ思う存分食べたのだから当然なんだろうが、そこで、ふと不思議に思った。
 はて、店の奴は、どうやって俺達が何を幾つ食べたのか知っているのか?
甥「あのねー、カッツオー(俺の名前は勝造)叔父さん、食べた皿を観て勘定して分かるっちゃが」
 そうか「なーるほど」と思ったが、折角、盗み食いをした気分になっていたのに…。
 どうして日本人は寿司だけ盗って、皿をレールに乗せたままにしないのか。そうすれば金を払わなくてもいいのに、と思った。日本人はブラジル人と違ってバカ正直なんだな、と。
 それから、1、2週間経ってだいぶ日本人化してきた俺は、「盗る」の発想からただの「取る」の発想に代わっていった。
 後にブラジルに帰った時、飲み友達の奴等は「ヒロさん、日本に行って勘定払いが正直になったね」と言われた。
 褒められたのかな? バカにされたのかな? 褒められたんだよな、となぜか不安になった。