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《ブラジル》弁護士がプレベンチ実態暴露「医師にクロロキン処方強制」=影の委員会に擦り寄る役員

CPIでのモラート弁護士(Edilson Rodrigues/Agência Senado)

 28日、上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)に、クロロキンを含む早期治療用キットの医薬品の不正治験や死亡記録改ざんの疑惑で揺れる高齢者向けの大手保険会社「プレベンチ・セニオル」を告発した医師らの弁護士、ブルーナ・モラート氏が召喚された。モラート氏はかねてから報じられていた、プレベンチの医師へのクロロキンなどの処方強要の実態や、死亡記録の改ざんなどについて証言した。28、29日付現地紙、サイトが報じている。
 モラート氏は、プレベンチによる不正治験や死亡記録改ざん疑惑に関する書類を作成し、CPIに提出した元・現職の医師12人の弁護を務めている。同弁護士は告発文書の作成自体に関わっており、医師らを代弁して証言を行う意向を表明し、この日の証言となった。
 同氏はこの証言に先立ち、プレベンチによる医師たちに対する威嚇疑惑をメディアに告発しただけでなく、自らの事務所も何者かに荒らされるという被害を受けており、この日の証言には諸方面からの注目が集まっていた。
 モラート氏は冒頭から、「今日ここで話すことによって自分の命が危険にさらされるかと不安だ」と、報復を恐れる発言を行った。そのため、ランドルフ・ロドリゲス副委員長が連邦警察に依頼し、彼女の警備を強化させた。
 モラート氏はかねてから噂されていた、コロナへの効用が立証されないヒドロキシクロロキンを含む「Kit-Covid」が、コロナウイルス感染症への処方セットとして強制的に配布された上、慢性病(基礎疾患)を抱える患者に対してまでそれらの医薬品を処方することを強要されたと証言した。また、同社のモットーは「従順と忠誠」で、先日証言を行った同社役員のペドロ・バチスタ・ジュニオル氏もその言葉を語っていた。

 「医薬品を処方する際は必須のはずの事前の心電図テストなども行われていなかった」とモラート氏は証言し、「医師たちはKit-Covidのマニュアルと共に処方を指示され、それに従わないと担当の患者数を減らされたりしており、最悪の場合は解任された」とも語っている。ペドロ氏は先日、医師は自分の判断で薬を処方していると語ったが、モラート氏は「医師には自由はなかった」と語っている。
 同弁護士はさらに、コロナ入院患者には、前立腺がんの治療薬のような、キット以外の医薬品も処方されていたとし、「高齢の患者たちはわらをもつかむ思いのため、これこれの薬を飲むようにと言われても、素直に了承するだけで、自分が治験に使われているとは考えもしなかった」とも語った。
 モラート氏はプレベンチと「影の委員会」の関係についても語り、「ペドロ・バチスタ役員はパンデミック勃発時からルイス・エンリケ・マンデッタ保健相(当時)に近づこうとしていたが、結局、連邦政府、それも経済省に近い医師たちに近づいた」とし、そこでパオロ・ザノット、ニーゼ・ヤマグチ医師らと「影の委員会」につながったと語っている。
 連邦政府や経済省はロックダウンなどによる経済停滞を懸念しており、早期治療によって外出規制などの影響を避けたいと考えていたという。
 また、プレベンチ内では右翼的傾向が強い社風があり、2015~17年には会社のイベントの際、胸に手を当てて「守護者の歌」という社歌を斉唱することを医師たちに義務付けていたという。
 モラート氏はさらに、大統領派の企業家ルシアノ・ハン氏の母親で、今年2月にコロナ感染症で治療中だったサンパウロ市サンクタ・マジオーレ病院で亡くなったレジーナ氏に関しても、「院内でコロナが悪化し、Kit-Covidを処方された末に亡くなった」とし、「彼女の死亡記録は改ざんされた」とハン氏のこれまでの主張と異なる証言を行っている。

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