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《ブラジル》兄弟3人が難病で腎臓移植=提供者の2人は実の兄弟

左からウルバノ、ボリス、カルロスの各氏(9月29日付G1サイトの記事の一部)

 ペルナンブコ州に住む14人兄弟の内3人が、アルポート症候群という遺伝性の病気で腎臓移植を受けるという珍しい体験をしたが、3人の内2人の腎臓は兄弟が提供するという美談が伝わっている。
 アルポート症候群は腎炎や難聴、目の合併症(円錐水晶体や白内障など)を伴う遺伝性の病気で、大半はX染色体の異常によって引き起こされるため、男性は重症化しやすい。男性患者では40歳までに90%が腎不全となり、透析や腎臓移植などの代替療法が必要となる。
 最初に発症したのは、商店役員のウルバノ・トリンダーデ氏だ。最初は血圧が高くなり、吐き気などを催すようになった。疲労感も強かったために病院に行き、検査を受けたところ、腎不全を起こしており、アルポート症候群だと診断されたという。
 これを知って検査を受け、適合性がある事を確認した後、即座に腎臓提供を申し出たのが、サーカスの芸術家で武術教師でもあるボリス・トリンダーデ氏だった。ボリス氏はその時を振り返り、「我々は何も知らない。全てを知っているのは神様だけさ。あの時は俺が神様の用意した道具だったんだ」と語る。
 だが、今度はアルベルト氏が同じ病気と診断され、腎臓移植が必要となった。この時は、ウルバノ氏の時同様、俳優のアラミス・トリンダーデ氏が腎臓を提供し、兄弟の命を救った。

 さらに数年後、今度は調理師のカルロス氏が同じ病気との診断を受けた。カルロス氏の場合は筋肉の痛みが酷く、集中治療室に入院する必要も生じた。同氏も腎臓移植が必要だったが、この時は、ロライマ州で起きたバイクの事故で死亡した30歳の男性の腎臓が適合する事がわかり、移植手術が行われた。
 トリンダーデ家の兄弟達は、病気と腎臓移植を通し、生涯が変わる体験をした。ウルバノ氏は、「ボリスのおかげで俺は息子達を育てる事ができた。俺は今、孫を育てるのを手伝っているが、あいつが腎臓を提供してくれなかったら今の生活はない。どんな言葉も感謝の気持ちを表すには足りないし、あいつもそれを知っている」と語っている。
 ペルナンブコ州の臓器移植センターによると、何らかの臓器の移植が必要で提供者を待っている人は2100人いるという。最も多いのは腎臓を待っている人の1100人だが、生きている人からの臓器提供は、腎臓や肺のように二つある臓器の場合は一つ、肝臓や骨髄の場合は一部、家族や親族の場合は4親等までなどの制限がある。
 また、死んだ人からの臓器提供は遺族の承認が必要だし、死因やその他の器官の損傷の有無などによる制限もある。
 昨年はコロナ禍のために臓器移植手術も制限され、ペルナンブコ州では5カ月間、手術ができなかったという。ペルナンブコ州レシフェ市にあるプロフェッソール・フェルナンド・フィゲイラ統合医学研究所は、北東部の患者に対応しており、サンパウロ、リオの2州に次いで、臓器移植手術の数が多いという。