上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)は6日、国家医療サービス監督庁(ANS)のパウロ・レベロ理事長を召喚した。同理事長は、ヒドロキシクロロキンなどを含む「Kit―Covid」の医薬品などでコロナウイルス感染症に関する不正治験を行っていた疑惑が持たれているサンパウロ州の大手保険会社「プレベンチ・セニオル」に関し、「治験の話は知っていた」などの発言を行い、今後の対応の見通しを語った。6、7日付現地紙、サイトが報じている。
「Kit―Covid」に含まれているヒドロキシクロロキンやイベルメクチンなど、コロナへの効用が証明されていない医薬品を使った不正治験をプレベンチが行っていたことを知っていながら、監視機関であるANSがなんら対策を講じてこなかったとの疑惑に対して、レベロ理事長の召喚が行われた。
レベロ氏はこれに関し、プレベンチの疑惑を「事前に知っていた」ことを認めた。だが、ANSが事実関係を知ったのは上院のCPIで関係者が召喚されはじめた9月だったとし、「告発はANSに対して直接行われたものではなかった」とも語った。
この証言に対し、ランドルフ・ロドリゲス副委員長は、「プレベンチを告発した医師のひとりは、2020年4月に最初の告発をANSに行ったとあるが」と反論した。この医師が、パオラという名の理事からKit―Covidによる早期治療を強要されたことを報告した証拠も、同副委員長は提示した。
これに対してレベロ氏は、「我々が正式な形で報告を受けたのは今月4日の23時40分だ」と反論した。
レベロ氏は、不正治験や死亡記録の改ざんなど、プレベンチに関わる疑惑は「非常に問題」との認識を示し、プレベンチが事情を説明できるように措置を講じたことや、告発されている内容と一致する証拠を確認したため、正式な調査の対象としたことを明らかにした。また、「プレベンチの日常の業務を監視するために、ANSの理事を派遣する」意向も表明した。理事の派遣と監視は14日からはじめる予定だという。
レベロ氏による証言の後、プレベンチ側は「このような対策が行われることは聞いていない」と反論する声明を出した。同社によると、調査のための技術訪問が行われ、告発文書の一部を示して、解析が必要だと語った後、種々の書類を持ち帰っただけで、理事の派遣や調査対象となったとの通達は受けていないという。また、「根拠もない告発に苦しんでおり、ANSの調査で真実が明らかになると信じている」とも記している。
上院CPIでは7日も、プレベンチ関連の証人召喚が行われている。そのひとりは、プレベンチを利用者としての立場から告発した弁護士のタデウ・フレデリコ・デ・アンドラーデ氏だ。
同氏はこれまでもメディアに対し、「プレベンチで悪夢のような体験をした」として、プレベンチの実態の暴露を行っている。7日には、処方された薬の中には前立腺がんの治療薬まで含まれていたことなどを明らかにした。
7日には、プレベンチに勤務していたヴァルテル・コレア・デ・ソウザ・ネット医師も証言を行った。
プレベンチはこの不正治験の問題以外にも、サンパウロ市内で管轄する病院の内、七つは建築基準や消防法の遵守を示す許可証がないことが発覚し、疑惑を深めている。
こうしたことから、上院でのコロナ禍のCPIが終わっても、今度はサンパウロ市議会が開設した、プレベンチCPIでの捜査が続く予定だ。サンパウロ市議会のCPIは7日に正式に発足し、18日には上院のCPIとの合同の会合も行う予定だ。
だが、サンパウロ州議会ではボルソナロ派の議員たちがCPIの設置を妨げようとする動きを見せたとも報じられており、6日に予定されていた設置決定のための投票は先延ばしされた。現段階ではまだ、州議会での開設は確定していない。