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選挙まで1年、大統領の所属政党はどこ?

ボルソナロ大統領(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

ボルソナロ大統領(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 来年の今頃には次の大統領選挙が行われる。その1年前にして、現職大統領の所属政党が決まらないという、異例の事態が発生している。
 事の発端はボルソナロ大統領がおかした「見込み違い」だ。ボルソナロ氏は2019年11月、所属の社会自由党(PSL)を抜け、新党「アリアンサ・ペロ・ブラジル」の結党を宣言した。
 この背景には、この直前に浮上したPSLの政党支援金不正使用の疑惑と距離を取りたかったというのが表向きにはある。だが、これまでの政治家人生で党の中枢についたことがなく、政党移籍を繰り返していたボルソナロ氏が夢にまで見た党首就任に希望を見だしていたこともあったかもしれない。
 そもそもが計画的でなく降って湧いたような離党と新党結成だっただけに、党登録申請に時間を要した。当初「20年の市長選に間に合わせる」としていたアリアンサの結党は間に合わず、それどころか22年大統領選にさえ間に合わないことが決定的になった。
「大統領ともあろう人が、なぜ結党に必要な国民約50万人の署名が集められないのか」が不思議ではある。だが、この経緯を見るに、想像されたほど支持者がいないか、アリアンサに政党結成のノウハウを持つ人がいなかったようだ。
 これで大統領選での所属政党選びが振り出しに戻ったボルソナロ氏だが、今後の道のりもかなり険しい。ここまで、長男のフラヴィオ上議が福音派ウニベルサル教会とつながりの強い共和者(RP)、「愛国者集団」を標榜するパトリオッタに所属し、父の入党の実現に動いたがいずれも破談に終わってしまった。
 そんなこともありボルソナロ氏は現在、進歩党(PP)、ブラジル労働党(PTB)という古巣の2党にあたっているが、ここでも交渉はすんなりと進んでいない。
 PPは現在連邦議会で支持を受けている政党だが、大統領が希望した「印刷付き電子投票」(ヴォット・インプレッソ)には同党の下議は3割ほどしか賛同しなかった。加えて、「中道勢力の代表格」に見えるPPでは、ボルソナロ氏を支持する極右主義者からの反発は免れないだろう。
 PTBは党首のロベルト・ジェフェルソン氏がノリノリでボルソナロ氏を支持しているが、元が保守政党でもなんでもない。その上、同氏の娘で元党首のクリスチアーネ・ブラジル氏がボルソナロ入党に猛反対。ここも前途は多難だろう。
 だが、そうしているうちにPSLが民主党(DEM)と合併。この新党でボルソナロ氏を推さないことも決定的になった。
 PSLに残されたボルソナロ派政治家たちに居場所はなく、自身の次の選挙のための居場所が必要となった。彼らのためにもボルソナロ氏はボスとして所属政党を決めなければならないが、果たして。(陽)