ボルソナロ大統領が7日、月経の健康保護と促進プログラム創設のための法案を裁可し、同日付連邦官報に掲載した。ただしその際、同プログラムの最重要項目のはずの低所得の学生や路上生活者などへの女性用生理用品の無料配布に関する項目に、拒否権を行使したと同日付の上下両院公式サイト、G1サイト、フォーリャ紙電子版などが報じた。
法案の要の部分への拒否権行使は、生理用品が買えずに学校を休む生徒や学生が4人に1人いる事や、布やトイレットペーパー、パンの中身などで代用している女性がいる事など、メディアでも報じられている窮状を大統領が認識していない証拠ともいえそうだ。
月経時の貧困女性の窮状はコロナ禍による生活困窮でより深刻になり、日本を始め他国でも報じられている。生活必需品とは言えないコンドームが保健所や駅、バスターミナルなどで無料配布されているこの国で、女性の必需品の無料配布に大統領が拒否権を行使したことに波紋が広がっている。
マリリア・アラエス下議が作成し、ゼナイデ・マイア上議が報告官を務めた法案(4968/2019)は8月に下院、9月には上院でも承認され、裁可待ちだった。
同法案が目指したプログラムは、低所得の学生(生徒)や路上生活者など、月経時に不可欠な生理用品入手が困難で、学業や日常生活に支障をきたしている人達の救済を目的としていた。
そのため、全27の連邦自治体の健康、社会福祉、教育、治安の各部門を中心に、月経時の健康や女性の健康全体に及ぼす影響などに関する情報を周知させるキャンペーン実施と共に、サポートが脆弱になりがちな人々への生理用品の無料配布を定めていた。
だが大統領は、女性用生理ナプキンの無料提供は、財源が明示されておらず、財政責任法、今年の年間予算法、新型コロナに対峙するための連邦プログラム作成に関わる補完法に違反するだけでなく、教育ネットワークや教育施設の独立性を侵す(両立しない)として、この項目に拒否権を行使した。
保健所などへ配布する分の費用は統一医療保健システム(SUS)の経費、刑務所や少年院などへの配布費用は刑務所システムの運営経費から拠出する事はプログラムにも記載されているが、大統領はこれらの項目にも拒否権を行使した。
大統領は、生理用ナプキンは必須医薬品リストに入っておらず、SUSで標準化された供給品に適合しない上、受益者を低所得家庭の学生や生徒、路上生活者、刑務所や少年院の収監者人などに限定する事も、SUSが目指す全人の健康を守るという概念から外れ、普遍性や統合性、公平性に合致しないとしている。
また、政府が取得する生理用ナプキンは持続可能な素材で作られたものを優先するという項目も、教育のネットワークや教育施設の独立性を侵し、資金源や財源の補償措置を示していないとして拒否権行使の対象となった。
大統領が拒否権を行使した項目は、議会が再審議を行って覆す事が出来る。女性議員達の訴えは男性議員にも届いたが、大統領には届いていなかったようだ。
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