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《ブラジル》風力発電で新たな技術開発=塔では届かない高さの風利用

新方式の風力発電に使意、持ち運びも容易な地上の装置(Divulgação UFSC)

 ブラジル南部サンタカタリーナ州の研究者達が従来の風力発電より廉価で効果的な技術を開発中で、今後のパイロットプロジェクトの資金を確保するため、年内にプロトタイプを発表する意向だと4日付アジェンシア・ブラジルや11日付ポルタル・ダ・イーリャなどが報じた。
 サンタカタリーナ連邦大学(UFSC)所属でUFSCkiteと呼ばれるグループが開発中の方式は、空中に飛ばした凧(カイト)を使って地上に置いた発電機のドラムに巻きつけたケーブルを引っ張って電気を起こす有線翼型風力タービン(Airborne Wind Energy)と呼ばれるもの。高い塔や大きな風車の建設が要らない分、従来型より廉価な上、より効果的に風を利用できる。
 UFSCkiteのアレッシャンドレ・トゥロフィノ教授によると、これまでの実験では地上に設置した発電機とカイトを結ぶケーブルは600メートル位まで伸ばしても無事だったという。同教授は「ケーブルを使うと従来の方式より高いところの風をキャッチできるため、より強い風をより頻繁に利用できる」と語っている。
 この方式なら鳥の接近を察知でき、鳥達が塔や羽にぶつかって死ぬのを減らす事が可能となる。つまり、設置や発電に要する経費を大幅に節約できる上、生態系にも優しいのだ。
 研究の一つでは、新方式でかかる経費は従来型の10分の1程度で済むと見られているという。また、ケーブルやカイトは再利用が可能なため、そういう意味でも環境に優しいといえる。

 有線翼型風力タービンを使った発電方式を研究しているグループは55あり、欧州のKite PowerやSkysails Powerのように、より進歩した技術を利用したプロジェクトもある。UFSCkiteによる研究は2012年に始まっており、パイオニアである上、ラテンアメリカでは唯一のグループだ。
 トゥロフィノ教授によると、プロトタイプの実験は既に最終段階で、今後の研究継続の可否は投資次第だという。UFSCkiteでは、年末までにプロトタイプを完成させ、今後のプロジェクトを進めるためのパートナーを獲得したいと考えている。
 欧州の大学や企業によれば、UFSCkiteが開発しているような技術は、今後5~10年で市場に到達する見込みだが、市場に到達した時点で技術を売る側に立ちたいのなら、今投資しなければならないという。
 連邦政府では、2029年までに風力発電の比率を17%に引き上げたいと考えている。現時点での風力発電の比率は10%だ。ブラジルは水力発電に依存している度合いが高く、今年のような少雨・干ばつに陥ると、水力発電以外の発電方法を持っているか否かが企業や国民の生死さえ分けかねない。
 水源枯渇を防ぐための再植林などの対策も不可欠だが、太陽光、風力などの代替エネルギーの研究・導入もその重要度を増している。