来年の大統領選の世論調査での支持率下降が続いているボルソナロ大統領だが11日、思わぬ援軍が現れた。それは、元ブラジルサッカー界の大スター、ロマーリオ上議だ。同上議は「コロナ対策でこそ問題はあったが、それ以外は労働者党(PT)政権よりよくなった」として、ボルソナロ氏への投票を宣言したのだ。
これに関しては驚きと、首をかしげる反応が相次いでいる。まず、ロマーリオ氏はこれまでボルソナリスタ(ボルソナロ支持者)だと一般に見られていなかった。さらに言えば、現在でこそ中道保守寄りの自由党(PL)所属だが、政界進出当時は中道左派でPTに伝統的に近いブラジル社会党(PSB)所属だった。
その彼が何をもって「ボルソナロ政権で良くなった」と判断を行っているかという基準が不思議がられている。同政権で最も期待された経済対策は、これといった成果がないうちにインフレとドル高、高失業者率の前にくずれ落ち、ボルソナロ氏が最も熱心に唱えていた「汚職撲滅」も自身の一家のラシャジーニャ疑惑とコロナワクチンの贈収賄工作疑惑の浮上で地に落ちている。元から懸念されていた環境問題では国際的な非難の的だ。
そこに加え、ネット上ではロマーリオ氏に関わる問題での矛盾も指摘されている。同政権のミウトン・リベイロ教育相は「障害者を健常者の教育現場から分ける」という方針だが、ロマーリオ氏の娘の一人アイヴィさん(16)はダウン症患者。彼は常々、アイヴィさんを健常者と同じ教育を受けさせたいと主張していたのに、それを反対する政権を支持するのはおかしくないか、ということだ。
サッカー界ではこれまでも、リバウド、カフー、ロナウジーニョ、カカーといった国際的有名選手がボルソナロ氏支持で知られている。
元有名スポーツ選手でボルソナロ大統領支持者といえば、9月7日の反最高裁のデモの日に、かつてのF1世界王者のネルソン・ピケが、ボルソナロ大統領が車でブラジリアのデモ現場に赴く際に運転手をつとめたことも話題となった。ピケの大統領支持はかねてから言及されていたが、こうした象徴的な場面で運転手をつとめるほどのものであったことに多くの人が驚いた。
F1界では、ピケの一世代前の世界王者のエメルソン・フィッティパルディもボルソナロ氏支持者だ。そうしたことから、ピケと世界王者を争ったライバルでブラジルF1界最大のスター、アイルトン・セナも「ヘルメットに国旗の色をあしらったほどの人なのだから生きていたらボルソナロ氏支持者だったのでは」とのネット上の声が目立っていた。
いずれにせよ、ボルソナロ氏にとってスポーツ界は自身の支持基盤として貴重なものであることは間違いないようだ。(陽)