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《ブラジル》中国の景気減速で悪影響=次々報道される悲観的予測=一次産品の価格下落直撃か=経済成長の足引っ張る

中国の株式相場イメージ(Twitter)

 中国の第3四半期の国内総生産(GDP)が低調に終わったことから、国際的に悲観的な推測が立ち始めている。なかでも中国の景気停滞の悪影響をもっとも受けそうなのがブラジルになるのではないかとの報道が、19日付の複数の現地紙が報じている。
 第3四半期のGDPが前期比で4・9%増に終わったという、中国政府の18日発表は国際市場に衝撃を走らせた。この成長率は、第1四半期の18・3%はもちろん、第2四半期の7・9%と比べても大幅な落ち込みとなっていたためだ。
 イタウ・ウニバンコ銀行のアナリスト、ルカ・バルボーザ氏は「中国のGDP成長が1%ポイント(P)下がると、ブラジルのそれも0・3%P下がる」と見ている。
 同銀行は、2022年の中国のGDP成長率予想を5・8%から5・1%に下方修正した。その場合、ブラジルの成長見込み率は0・5%に落ちるという。「仮に中国の成長が4%に終われば、ブラジルの成長は0・2%で終わるということだ」とバルボーザ氏は語っている。
 中国の経済停滞を招いた要因のひとつは、デルタ株に対する対策だ。他の国が「デルタとの共存」という形でワクチン接種とともに経済対策を行っているのに対し、中国では感染を封じ込めるために厳しい規制が行われており、デルタ株の感染拡大にもロックダウンで対応しようとした。
 市場関係者によると、これが中国全体の経済活動を縮小させ、同国の経済成長を支えてきた家庭消費を冷え込ませているという。中国は市街化や近代化を促進し、2000年代入ってからは常に、年10%台という高成長率を記録してきたが、今年は7~8%台にとどまる見込みだという。
 また、同国の不動産大手の恒大集団(エヴァーグランデ)の負債が中国のGDPの2%に相当するほどに膨らみ、返済が困難になったことで、建設事業の見通しが立たなくなり、社会、経済に混乱が起こっていることも停滞を招いた。

 加えて、中国では脱炭素政策などの影響で石炭が主燃料の火力発電が抑制された結果、深刻な電力不足が各地を襲っており、工場の稼動に深刻な影響を与えていると報道されている。
 中国の経済が停滞した場合に懸念されるのは、ブラジルの輸出の停滞だ。中国はブラジル最大の貿易相手国で、ブラジル経済は肉などの食物や鉱山資源の対中輸出に頼っている部分が大きい。連邦政府で貿易局長をつとめた経験もあるコンサルタントのウェルベル・バラル氏は、「経済が停滞しても中国がブラジルからの輸入をやめるとは思えない」が、「一次産品の国際価格はかなりの影響を受けることになるだろう」と予測。中国の需要が減ることで、コモディティの国際価格が下落することは避けられないと見ている。
 この中国の件がなくても、ブラジル経済の状況は苦しい立場におかれていた。ひとつは、記録的な少雨により、国内の発電量の大半を占める水力発電が危機に陥っていることだ。この電力不足と火力発電の増加が、生産活動の低下や電気代の値上がりによるインフレ問題を引き起こしている。
 ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)が国際通貨基金(IMF)が先週発表したデータをもとに行った最新の研究結果によると、世界各国はコロナ禍のせいで高インフレに悩まされているが、ブラジルのインフレは年8〜9%で推移しており、世界全体の83%の国より厳しい状況に置かれているという。
 IMFは年末時点のブラジルのインフレ率を7・9%、新興国のインフレ率を5・8%、世界全体の平均は4・8%と予想している。だが、ブラジルの9月の拡大消費者物価指数(IPCA)は12カ月間の累積が10・25%に及んでおり、状況はさらに厳しくなる可能性がある。

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