エクアドルのギジェルモ・ラッソ大統領は18日、60日間の非常事態を宣言した。暴力と麻薬犯罪への対策が理由とされている。18、19日付現地紙、サイトが報じている。
非常事態は、ラッソ大統領が18日の夜に行ったテレビ演説で宣言された。大統領によると、非常事態を宣言するに至った理由は、街が暴力と麻薬犯罪に溢れているためで、その事態を改善し、市民の安全を確保するため、軍隊を常駐させるという。軍隊は、警察と共にパトロールを行い、市民の安全を守るほか、犯罪防止や秩序の維持に努め、治安統制、家宅捜査、物品押収などにも参加することになるという。
ラッソ氏は「今、エクアドルの通りには敵しかいない。それは麻薬の密売人だ。エクアドルは麻薬を売りさばく国だったが、近年は麻薬の消費国にもなっている」とし、国民に麻薬問題の悪化の深刻さを訴えた。
大統領はまた、暴力問題の深刻さも主張した。エクアドル内務省によると、同国では1月から8月にかけて、1427人が殺人被害にあっている。この数は既に、昨年1年間で記録した犠牲者の総数を55人上回っている。「この後、国防省が具体的な対策案を発表することになっている」と大統領は語っている。
この演説では、新しい国防相として、退役軍人のルイス・エルナンデス氏を指名したことも発表された。前任のフェルナンド・ドノーゾ氏は、この日の午前中に辞任していた。
エクアドルでは麻薬密売組織の抗争が激化し、街中での暴力のみならず、監獄での暴動も頻発化している。9月には同国最大の人口を誇るグアヤキルで、少なくとも118人が死亡、80人が負傷する暴動が起きている。
この暴動は、エクアドル国内の覇を争う麻薬組織同士の抗争が引き金となって起きた。麻薬組織の一つのロス・チョネロスは、中南米で長年にわたって麻薬密売で最大の影響を持ち続けているメキシコの麻薬カルテル「シナロア」とつながりがある。
他方、ロス・チョネロスと対抗している組織は、シナロアと対抗するメキシコの麻薬カルテル「新世代ハリスコ」(CJNG)とつながりがあり、問題が複雑化している。
ラッソ氏は今年の5月24日に大統領に就任したばかりだが、就任から5カ月目での非常事態宣言となった。同氏は金融関係の専門家として知られている。