九州大学の協力をえて日系6病院の管理栄養士7人が作った病院食の和食レシピ本『日本の味』の出版記念式典が15日、編集刊行を担当したサンタクルス学術研究所(IPESC)によって開催された。IPESCはサンタクルス日本病院(HJSC)の外郭団体。
日系6病院(サンタクルス病院、日伯友好病院、アマゾニア病院、パラナ病院、ノヴァアチバイア病院、杉沢病院)の管理栄養士7人は、2019年にJICA日系研修事業によって九州大学(福岡市)に1カ月間院内食の研修を受けた。
それを機にブラジル人の舌にあって当地で材料の調達しやすいレシピを同大学と共に開発し、まとめたのが同著だ。
出版されたレシピ本は日ポ両語併記。発行部数は千部。本は一般向けに配布は行われていない。一般向けには誰でも読めるように同院サイトでPDF版(https://www.hjsc.com.br/wp-content/uploads/2021/10/Sabor-do-Japao.pdf)を公開した。
式典には在サンパウロ総領事館の小室千帆首席領事、JICAブラジル事務所の江口雅之所長、日系病院理事等が式典に参加し、日本国内からも九州大学の清水周次(しみず・しゅうじ)副理事や同大学栄養管理部の花田浩和(はなだ・ひろかず)栄養管理室室長らもオンライン会議システム上で参加した。
HJSC病院評議会議長でもある石川レナトIPESC名誉理事長は、「この取り組みは、まさにIPESCの活動に相応しいと考え、出版する運びとなりました」と開会挨拶で経緯を説明した。
IPESCは若く優秀な医療従事者の交流や育成の場となることを目的に2018年に設立。健康・文化・教育・スポーツ各分野での研究や、国内外研究機関との医学・文化交流の促進、専門家同士の人的交流の促進、健康分野における論文翻訳と国内での普及を指針に活動している。
佐藤マリオHJSC理事長は総領事館やJICAによる支援に感謝した後、「これからも日系病院の皆さんと共に日本の知見や技術をブラジルに広めたい」との展望を語った。同院の設立者の1人である武田義信医師が九州大学の卒業生であることから「当院とは約90年の関係がある。研修でより深まった」と喜んだ。
来賓や関係者による挨拶の後、西国幸四郎IPESC理事長による『「和食」の普及を通じたブラジル人の健康寿命の増進』の講演が行われた。西国同理事長は「伯国では10%の人が少なくとも一つ慢性病持つ」と挙げ、治療・予防の他に「食生活を変える事が一番取り入れやすい」と力説した。
病院食では高血圧の患者は塩分を控えることが重要だが、単に塩分を減らすだけでは食事量が減ってしまう。そこで塩分を控えても満足感が得られる「うまみ」の活用が重要だと説明した。
最後に試食会も行われ、白身魚、南瓜の煮つけ、春雨のサラダ、味噌汁、ご飯などの病院食料理が並んだ。在聖総領事館小室千帆首席領事は「みそ汁は蓋を開けてすぐよい香りがして、講演会で西国先生がおっしゃっていたように旨味を和食に活かしている」とコメントを寄せた。
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サンタクルス学術研究所(IPESC)から出版されたレシピ本『日本の味は、一般向けに同院サイトで電子書籍の形で公開した。JICAではスペイン語翻訳し、中南米地域内の他のJICA事務所にも共有予定だという。12月にはJICA横浜で企画展も開催するという。JICAブラジル事務所の門屋篤典次長も「見た目も分かりやすく作られていて、一言でいうと素晴らしい。研修で得たものを活用するだけでなく、広める活動をして下さり嬉しい」と喜びのコメントを寄せた。