ホーム | ブラジル国内ニュース | 《アウシリオ・ブラジル》「電撃発表」のはずが急きょ中止=市場では株価が下落、ドル高に=大統領が400レアル支給主張=財源確保のめどがつかないまま

《アウシリオ・ブラジル》「電撃発表」のはずが急きょ中止=市場では株価が下落、ドル高に=大統領が400レアル支給主張=財源確保のめどがつかないまま

ボルソナロ大統領(Marcos Correa/Presidencia)

 連邦政府は19日午後、新社会保障制度「アウシリオ・ブラジル」の電撃発表を行う予定で会場の準備まで行っていたが、30分前に急きょ中止した。財源確保のあてもない状態なのに、世帯あたりの受給額を400レアルに引き上げる意向であることが事前に報じられ、市場で反発を招いたことが響いた。20日付現地紙が報じている。
 「19日の午後5時に連邦政府がアウシリオの実施要綱の発表を行う」との一報はこの日の午前9時前後に報じられた。それによると、今月で新型コロナの緊急支援金の支給が終了するので、11月からは新しい社会保障制度に切り替えられるように、急いで詳細を発表したいとのことだった。
 この前日の18日、連邦政府内では経済スタッフを含めた会議が行われた。そこで「緊急支援金の支給延長は行わない」との意向が固められ、パウロ・ゲデス経済相にアウシリオによる支給額の引き上げ圧力がかけられた。
 経済省はアウシリオの支給額を300レアルとする方向で準備を行っていたが、この席で、新たな社会保障制度による支援額は現在の「ボルサ・ファミリア」が支給している189レアルの2倍以上で、ボウサ・ファミリア受給家庭への緊急支援金として今年支払われた300レアルより33%高い400レアルにしたいという声が上がった。
 この額はボルソナロ大統領自身が求めた額だ。大統領は会議で、「インフレが9%を超えているのに300レアルは安い」と強く主張したという。大統領としては、22年の大統領選で最大のライバルとなるルーラ元大統領が創設したボウサ・ファミリアに代わる社会保障制度を発足させ、大統領選の売りにしたいところだ。

 アウシリオに関する計画や実施を担当する市民省は、400レアルの支給を22年末まで継続するための試算もはじめている。
 だが、裁判所が支払いを命じた「プレカトリオ」を分割で支払うことでひねり出す予定のアウシリオの実施のための財源は、法案審議が遅れて、確保されていない。アウシリオの財源が確保されていないことは以前から指摘されている。連邦議会はその目処が立たないことから、経済省に緊急支援金の延長を求めていたが、その上に、支給額を引き上げようとしていることは、連邦政府の財政運営への懸念を強めた。
 また、これまでのボルサ・ファミリアの受給者と緊急支援金の受給者に400レアルの支給を行おうとすると、連邦政府の歳出上限を破る上、ただでさえ国際的に見てかなり高率となっているインフレ率がさらに高まる可能性がある。その懸念はボルソナロ氏自身も認めており、具体的な対策もない状態だという。
 この「アウシリオ発表か」の一報は市場を混乱に陥らせた。この日、サンパウロ証券市場(B3)の平均株価指数(Ibovespa)は3・28%減の11万673ポイントを記録した。同指数は前日も、中国の第3四半期の国内総生産(GDP)成長率が予想を大幅に下回ったことで、0・19%の下落を記録したばかりだった。
 1ドルは1・36%高騰し、5・5944レアルとなった。これは5・6241レアルを記録した4月16日以来の高額だ。また、この日は一時、5・6131レアルに達していた。
 市場でこうした否定的な反応が起こったことにより、19日に予定されていたアウシリオの発表は中止となったが、ボルソナロ大統領は20日もセアラー州で、支援者たちを前に400レアルの支給を約束。また、ジョアン・ロマ市民相も20日午後、財源についての説明はないまま、新しい社会保障制度は11月から始まり、支給額は400レアルと公式に報じた。