【既報関連】南米大陸の中央に位置するボリビアには、ブラジルの麻薬密売組織の一つでサンパウロ州を本拠とする州都第一コマンド(PCC)が進出し、麻薬カルテル「ナルコスル」の一大拠点になっただけでなく、PCC大物達が身を隠したり、安全な国に脱出したりするための抜け道にもなっていると報じられている。
かつてのPCCはパラグアイを主な取引相手国としており、国際的な麻薬密売者として知られるウィリアン・エルバス・カマッショ(通称マルコラ)が、1999年にサンパウロ州で捕まった時はパラグアイで農園を購入して戻ってきたところだった。
だが、現在の拠点はボリビアで、マルコラの仲間でナルコスル幹部のジルベルト・アパレシド・ドス・サントス(通称フミーニョ)はボリビアに農園を持ち、遺伝子組み換えのコカ栽培も行っていた。農園はボリビア人との共同経営で、セスナ社の小型機を移動に使っていた。ブラジルの連邦警察が5メートルの距離まで接近しても何もできずに帰った事もあったという。
フミーニョはナイジェリア人達の助けを得て、欧州や東洋への新たな麻薬販売ルート開拓のために2018年にアフリカに渡航。彼は約20年間の逃亡生活の末、2020年に米国の麻薬取締局(DEA)の協力を得た警察官により、モザンビークで捕まった。
2018年にブラジル国内で起きたPCCリーダーのロジェリオ・ジェレミアス・デ・シモネ(通称ジェジェ・デ・マンゲ)殺害事件に関する捜査「シャークス作戦」で名前が挙がったリーダー達も、ボリビアに住み活動している。
その一人はナルコスルの輸送担当者で、コカイン生産者との交渉役も務めるヴァルデシ・アルヴェス・ドス・サントス(通称コロリド)だ。コロリドはサンパウロ州の刑務所に収監されていたが、2014年の父の日の一時外出後に逃亡。現在は組織屈指の国際的な麻薬取引仲介役だ。
ボリビア国内のナルコスルの聖地サンタクルス・デ・ラ・シエラでレストランを経営するセルジオ・ルイス・デ・フレイタス(通称ミジョン)は、陸輸部門を担当し、コロリドの右腕だ。
マルコラが後任の首領に任じ、ミナス州ベロ・オリゾンテにあるモザンビーク総領事館で働いていたマルコス・ロベルト・ダ・アルメイダ(通称トゥタ)も、同国に逃亡中とされている。モザンビークは5日にリオ州の港で押収されたコカイン5トンを隠したコンテナ二つの送付先で、欧州への麻薬の出所をカモフラージュするのに使われる地名でもある。
ナルコスルのリーダーには、サンパウロ州サントス港からのコンテナ便で欧州に麻薬を送り込んでいたスアエリオ・マルチンス・レダ(通称ペイシ)もいる。
ナルコスルはサントス港やリオ港、サンタカタリーナ州イタジャイー港、セアラー州フォルタレーザ港、ペルナンブコ州レシフェ港、リオ・グランデ・ド・ノルテ州ナタル港などを使い、欧州やアフリカ、アジア、米国にボリビアで調達した麻薬を送り出している。