聖南西にあるピラール・ド・スール日本語学校は3日午前8時半から、2年ぶりに「第42回校内お話発表会」を開催した。当日は同文協会館で、4歳の幼稚園児を含む全生徒40人が参加し、学年別に5組に分かれ競い合った。
同校は、昨年からのコロナ禍発生以降もお話発表会を含む全ての行事が中止となったが、自宅学習やオンライン授業を行うなど学習指導を継続してきた。
今年は校内での感染対策を徹底し、2月からクラスにより登校日を変えるなどして週3日で対面授業を再開。コロナに細心の留意を払いながら通学日数を増やし、9月からはコロナ禍以前の週5日制の活動に戻った。
お話発表会は、日本語学校の教育活動の中でも非常に意義のある行事だと教師らは考えており、2年連続中止にしてしまうと来年以降の生徒の成長に影響が出るのではと危惧し開催された。
保護者会会長の寺尾テルシオ氏(二世)は、「お話発表会はとても大切な行事。それは自分の緊張感に立ち向かい、大勢の前で語り合う能力を育てるから。この経験は子供たちの将来にきっと役に立つと思う。この学校を卒業した学生から、人前で話さなければならない時にお話発表会の経験が助けてくれたという話をたくさん聞いた」と感想を述べる。
当日、審査員の数を10人から6人に減らし、見学できる保護者は生徒1人当たり2人まで。昼食は無し、会場内の通気をよくし、席の間隔を開け、マイクのカバーの交換およびアルコール消毒を発表者ごとに行うなど感染対策を徹底した。
開会式で生徒代表の佐々木ゆうた君(14歳・三世)から「今年もないと思っていたけれど、開催が決まり嬉しかった。生徒代表にもなったので二倍緊張している。僕は人の前で話す事は得意ではないけど一生懸命練習したので、上手に発表したい。生徒の皆さんも最後まで頑張りましょう」と挨拶した。
例年より練習時間が2週間少なく、生徒が自作の作文を暗記する時間は1週間前後しかなかったという。発表のテーマは「自己紹介」「家族」「日本語学校の行事」「現代社会の問題」。
井伊さゆみさん(16歳、三世)は女子が安心して外を出歩けるようにすることが教育の重要な役割と話し、下田としお君(16歳、三世)は男女差別やジェンダー問題、アフガニスタンの状況などについて考察・言及し、小田竜太君(18歳、三世)はSNS普及に伴う問題についての考えを発表し、それぞれの生徒がじっくりと考えた発表だった。
保護者は熱心に生徒達全員の発表を聞き入った。審査員らは「皆よかったが、特に7~9歳のきれいな発音に驚いた」と感想を述べた。
表彰式では9人の入賞者が発表され、併せて8月末に行われた聖南西作文コンクール校内選考会の入賞者9人の表彰も行われた。2018年から日本語学校に通うゴエス・カイオ君(8歳)の母親のタチアネ・カルバーリョ・ゴメスさんは、「子ども達は多くの人の前で話すことに、不安を感じたり緊張したりします。これらの困難を乗り越えて発表する姿を見ることはとても嬉しい。私はこの文化に本当に感心しています。自分の息子がこの日本語学校でどれだけ学び、成長してきたかを見ることができてとても嬉しい。息子もこの日本語学校がとても大好きです」と満足感を漂わせていた。
なお、例年10月末に行われる「聖南西お話学習発表会」は、今年は参加希望者の発表を各校で撮影し地区として集めて1つに編集してユーチューブで限定配信することになっている。