「極右勢力はすでにボルソナロを必要としていない」。17日、エスタード紙の電子版でこのような記事を見つけた。
印象的な見出しに興味をもって読み始めたが、同コラムは「極右勢力はボルソナロ氏以上に過激化している。以前、彼らの敵は、彼らが古いと見なす既存の大型政党だった。だが、今の彼らが敵視しているのは連邦議会や最高裁といった権力そのものに変わってきている」と指摘し、ボルソナロ氏以上に推進力のある過激な存在を求め始めている、と論じている。
これを読んで「危険な方向に進んでいるな」と思いつつ、「だが、これでは世間の共感を得ることはできず、社会の中で孤立していくしかない」と思った。それはズバリ、ブラジルの現象では、彼らが望むような世論の極端な右傾化はまず不可能だと思えるからだ。
コラム子がそう思う根拠その1は、まずブラジルに米国のような「プア・ホワイト」の層が薄いことだ。米国社会は白人が6割以上を占めるが、それだけの人口を抱えれば白人でも、とりわけ都市郊外や片田舎にでもいけば貧困層が多く存在する。
そんな彼らが「移民や非白人たちのせいで自分たちの立場が脅かされた」と煽られれば、かなりの団結力を示すことも可能。ドナルド・トランプ氏の暗躍はそうしたものに支えられたものだった。
だが、ブラジルは白人が40%台のところ、黒人、褐色系の人たちが50%を超えているうえに、「貧しい人」の社会イメージは常に黒人のまま。「白人が黒人に追いやられている」という社会意識が生まれにくくなっている。
そしてもうひとつが「左派は嘘をついて汚れている」とする戦略が取りにくくなってしまったことだ。労働者党(PT)政権末期はこれが効いた。ラヴァ・ジャット作戦で政治家たちが汚職疑惑で追い込まれていたことに加え、ベネズエラのマドゥーロ政権の独裁など、左派にネガティヴなイメージがつけやすかった。ボルソナロ氏が大統領になれた背景にもこれがあった。
だが、今やラヴァ・ジャット作戦が「PTに不利な証言をするように証言者に働きかけていた」との見方がハッカーの盗聴や報奨付供述(デラソン・プレミアーダ)の証言者、フェイクニュース捜査の取締対象者のSNSの記録から次々と浮上し、左派に有利な流れが生まれている。
逆に、大統領の息子たちや極右ブロガー、企業家らは「極右拡散者」として悪名を高める事態に至っている。
こうした状況の中で、彼らがさらに過激な方法で自身の正義を主張し、民主主義を否定するような過激行動に出たところで、目立ちはするものの、どれだけの社会的共感を得ることができるか。それはかなり厳しいと言わざるを得ない。(陽)