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特別寄稿=《ブラジル》益々強大になる中国の存在=日系社会の活力を示す時=サンパウロ市 駒形秀雄/コロニア・ピニャール 天野鉄人

ブラジル貿易の最大お客様は中国(Foto: Fernanda Carvalho/Fotos Públicas)

 今、中国の存在が世界の注目を集めています。
 インド太平洋地域での米国勢との主導権争いや、台湾併合を狙う武力的威嚇などの成り行きが、特に注視されています。それらは日本の利害や安全にも大きく絡む事案で、私達もそれに無関心では居られない事になります。
 一方その中国勢のブラジルでの活動状況などはどうなっているのでしょうか?
 サンパウロ商業中心街への進出や、一般市中での中国系物品の常態化で、中国勢がこの地に相当進出をしていることは肌でヒシヒシと感じられますが、具体的には良く知られておりません。
 ここでは一つ「ブラジルに於ける中国勢の存在」について、皆様と一緒に数字に基づいた検証をしてみましょう。

ブラジル貿易の最大の顧客

 ブラジルからの輸出における最大の「お客様」は中国です。鉄鉱石、大豆などを中心に年間680億ドルも買ってくれ、お金が欲しいブラジルの外貨収入を大いに助けています。(表)で分かる通り、2位米国の3倍以上、6位日本の15倍の支払い額です。
 ではブラジルの各国からの輸入はどうかというと、これまた最大の供給国は中国で、2位の米国を大きく引き離しています。皆様ご存じのように、中国は衣料品、日用雑貨、工業製品などを巾広く提供しています。
 私の知り合いのブラジル人女性が「今度は中国へ行ってみたい」と言うのです。今までシナの事など話題にも上がらなかったのに「何で急に?」と思って聞くと、色鮮やか、かつ精巧に出来た玩具を手に「こんな良い物を、こんな値段で作れるなんて中国はきっと素晴らしい国なんでしょう。ぜひ行ってみたいわ」でした。成程、納得ですね。
 中国とブラジルの貿易額は2020年、1千億ドルを超える関係の深い国なのです。

中国からの投資もあります

 中国はブラジルからの商取引額が大きいだけでなく、ブラジルに自分の金を持ち込んで「投資」も行っております。以前はルクセンブルグとか税金の掛からないタックスヘヴン国経由で資金を持ち込んで居ましたが、最近では表門から公式にブラジルに投資しています。
 業種別では電力部門が最大で、他に石油開発、鉱物資源などに大型の投資をしています。2007年から2020年までの14年間に176の案件に投資し、内、2020年には66億ドルを持ち込んでいます。
 石油開発などはリスクも多く、事情に精通していない外国勢などは二の足を踏む領域なのですが、先回の案件入札では唯一中国が応札、契約しています。
 「コロナ禍で先行き不透明なのに、新鉱区開発に投資とは、大した度胸だ」「この様な先行投資は相当本気でブラジルに対応している印だな」と、これは投資もせず、指をくわえて見ていた日本企業社員のコメントでした。
 ところで中国勢の積極姿勢はそれに止まりません。今度は中国大手の長城汽車(GRANDE MURALHA)が「自動車生産をやる」というのです。2021年8月、サンパウロ州イラセマポリスにあるダイムラー(ベンツ)の工場を買収して年間10万台規模の乗用車ーSUVとピックアップ(小型トラック)の製造、販売をやると発表したのです。
 投入資金額は約7億ドルと言われております。
 中国自動車業界は近く公害の少ない電気自動車(CARRO ELETRICO)に切り替えると発表して居ますが、ブラジルでも環境が整い次第、電動車の生産に踏み切るでしょう。
 このコロナ禍時代、皆が新規投資には、特に政情不安のブラジル投資には、二の足を踏んでいる時代に「さすが中国、打つ手が早い」これは日系車関係者の言葉でした。
 なお、中国からは既に奇瑞汽車(CHERY)がゴヤス州で車を作っており、安徽江淮江汽車(JAC)も進出をしております。

トップをうかがう中国

 現在世界で一番金持ちの国は米国です。これは誰でもが知っているところですね。2番目は中国、そして3番目は日本、以下、ドイツ、フランス、イギリスと続きます。我がブラジルはその次くらいにあったのですが、経済不振で今年あたり10番目以下に下がっているかも知れません。
 ブラジル在住日本人の間ではまだ「日本は世界第2の経済大国」とか言われますが、それは「過ぎた昔の話」。現実はキチンと認識しなくてはなりませんね。

では、これからはどうなるか?

 経済は「生き物」なので将来を予測することは中々難しいのですが、発表されている経済成長率=GDP伸び率から見ると・米国2%、中国8%、日本2%と言われていますから、この調子でそれぞれの国が拡大すると、あまり遠くない内に中国が米国を上回り経済規模世界一になると予測されます。
 「チェ、なんだ! またチャンか」舌打ちが聞こえました。

日系社会の力を生かそう

 隣の家族(中国)がどんどん盛大になるのを見て、うらやむばかりでは能がありません。我が日本国も十分に知力を生かし、また、努力もしてこのブラジルでの存在感を高めなければなりません。「それで、何をするのか」と言う問いには以下のような提案をさせて頂きます。
 それは日本人の集中率の高いサンパウロ州サンパウロ市に日本人及びその親派の為の立派なセンタービルを建てることです。センタービルが出来れば、それだけで日本文化の広告塔の役割を果たし、かつ、200万人とも言われる―日系人子弟の心の拠り所になります。
 私は既にこの「センター」の設計見取り図を持っており、このビルを取り敢えず「CASA ÐO JAPAO」と呼びます。
#ビルの規模は、日系を代表するにふさわしい10階以上の近代ビルとします。外観だけでなく、ビル自体が進んだIT機能を持ったインテリジェント・ビルです。その中には日本政府の公的機関や進出企業にも入居を願い、安心して仕事に専念出来る様な安全性の備わったビルにします。勿論、地元日系社会の公的協会、企業にも入って貰いましょう。
 会館の維持に苦慮する県人会なども加われば、以前から言われていた「県人会センター」の性格も併せ持つことになります。
 勿論、多くの人々が集まれる集会場、教養娯楽のスペースも準備します。見晴らしの良い屋上にはカフェテラスを設けて市民の憩いの場に出来ます。ここに小さな神社(祠)を設ければ、現在舗道にある鳥居も生きて来ることになるでしょう。
#「CASA ÐO JAPAO」ビルの位置としては色々考えられますが、やはり現在のリベルダーデ地区、日本広場から文協のあるサンジョアキンの付近でしょう。この地区には何十年も前からガンバって来た日本人先人たちの汗と涙が浸み込んでおり、その志を受け継ぎたいものです。
 現在、この地区には中国系の商店やレストランが巾を利かしており、日系の影が薄くなっていますが、ここに「CASA ÐO JAPAO」をドンと建てて、「ああ、ここはやはりJAPAO LIBERDADEだ」と分かるようにするのです。
#「で、肝心の資金はどうするの」ですが、しっかりした計画さえあればお金は必ず集まります。多くの人達の希望だと示せるように、広く一般からの寄付を募ります。このような事業は金額の多寡より多くの人達の「気持ち」が大切なのです。
 この様な現地の熱意と必要性がハッキリすれば我が日本政府も必ず援助の手を伸べてくれます。ブラジルには200万人以上と言われる日本人の子孫がおりますが、この様な親日ブラジル人を「日本応援グループ」に取り入れることは、日本国にも日系コロニアにとっても大きな力になります。
 在ブラジルの日系人の存在を活用しない手はありません。 
 一方のブラジルの日系人は、日本国の発展と、ここブラジルでの日系社会の強大化を心から願っております。
 さて、この候補地周辺には日系人所有の土地もあるのですが、既に目ざとい中国系から「この土地を売らないか?」と接触があるとのことです。この様なプランを中国系に握られ、「リベルダーデ・チャイナタウン」と呼ばれるようにさせたのでは、腕一本、スネ一本でここまで闘って来たご先祖様にも申し訳がたちません。
 私達の生活をより良いものにし、皆が幸せになれる様、ひいては日本の国威発揚にもつながる様、皆で力を合せましょう。