ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ボルソナロがG20孤立、COP不参加=外交の場でも虚偽報告=護衛が記者の腹を殴る=根拠なくルーラ麻薬犯説?

《ブラジル》ボルソナロがG20孤立、COP不参加=外交の場でも虚偽報告=護衛が記者の腹を殴る=根拠なくルーラ麻薬犯説?

G20でのボルソナロ氏(Alan Santos/PR)

 10月末、ボルソナロ大統領はG20首脳サミットのためにイタリアに渡ったが、サミットの最中は孤立状態で、ブラジルの経済状況や自身の支持率について世界の首脳に事実と異なる虚偽の報告を行うなどした。また、護衛が取材陣に暴力を振るい、市民からは抗議行動を受け、テレビでは根拠もなく「ルーラ元大統領は麻薬組織と関係している」との発言を行うなど、物議を醸した。10月30〜11月1日付現地紙、サイトが報じている。
 ボルソナロ大統領は10月29日にG20開催地のローマに着くなり、ブラジル国旗などを持った現地在住のブラジル人支持者たちに囲まれるなどの歓迎を受けたが、彼らのほとんどがマスクの着用を行わなかったことで、早速、批判の対象となった。
 ボルソナロ氏はイタリアでは同国の極右政党「リーガ」とつながりがあることから、一部の人々の間で人気が高いが、その一方で反感も強く、ローマでは抗議行動が起こる一幕も見られた。
 サミットは10月30~31日に開催されたが、その場では孤立するボルソナロ氏の姿が目立っていた。ボルソナロ氏は法定アマゾンでの森林伐採や森林火災の増加などで国際的な批判対象となっている上、G20の首脳で唯一の新型コロナワクチンの未接種者だ。
 それなのに、G20では30日に、「ブラジルは積極的にワクチン接種を行い、総人口の過半数が接種を完了。成人の94%以上が少なくとも1回の接種を受けた」「2億6千万回以上の接種を行い、その内の1億4千万回分は国内生産」などと、あたかも自分が進めた政策のように語った。
 さらに、他国の首脳たちがそのまま流れて参加する、英国グラスゴーでの国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に参加しないことも公にしている。
 サミット会場でのボルソナロ氏は、同じ極右系のトルコのエルドアン大統領と会談を行った。ボルソナロ氏はそこで、10%前後まであがっているインフレや1400万人の失業者に関しては触れず、ブラジル経済は「力強く回復している」と語った。さらに、「良い・最良」との評価は20%台前半まで下がっているにもかかわらず、「私は国民から強い支持を受けている」と話した。

 ただ、この際にボルソナロ氏は「ペトロブラスは問題だ」と、第3四半期で高い収益を得ながら、ガソリンやディーゼルの値上げを敢行する石油公社を批判している。
 この後、ボルソナロ大統領はブラジル・メディアの取材を受け、取材陣の一部から「イベントにも参加せず、孤立しているように見えたが」との質問を受けた。すると、これに腹を立てた護衛が取材陣に暴力を振るう行為に出て、問題となりさらに孤立を深めた。
 大統領は他国首脳のような集団記者会見を行うことを避け、大使館の近くで待っていた支持者たちと会うために出かけた際に質問を受けたが、取材を嫌うそぶりを見せたため、護衛たちが記者の腹を殴り、力づくで追い出そうとしたという。
 10月31日には、各国首脳が観光名所「トレヴィの泉」などをめぐる記念観光の時間もあったが、このときもボルソナロ大統領は参加していなかった。
 また、同日はイタリアのテレビ局「スカイテレビ24」の取材を受けたが、そこで、22年の大統領選の対抗馬で、世論調査では支持率トップのルーラ元大統領に関し、「ブラジルの巨悪の象徴」「ペトロブラスを崩壊に導いた」と語ったうえに、「権力を手にするため、90年代に麻薬組織と壮大な計画をはじめた」と語った。
 大統領はその発言を示すための証拠を示しておらず、ルーラ氏からも「世界はもう、彼が嘘つきだということを知っている」と反論された。
 ボルソナロ大統領はG20終了後の1日、名誉市民のタイトルを受け取るため、曽祖父の出身地で、極右政党所属の市長が統治しているイタリア北部のアングイッラーラ・ヴェーネタ市(基礎自治体)を訪問したが、ここでも歓迎する人々と、「出て行け」と叫ぶ人々とに囲まれた。
 同市在住のブラジル人の一人は、「イタリア人子弟の立派な大統領。議会調査委員会(CPI)の報告は嘘」としている。だが、法定アマゾンが34%を占めるマラニョン州で働く宣教師が12人いる宣教団体は、「先住民や女性を蔑視する発言やワクチン接種拒否、アマゾンでの破壊行為など、彼の言動も知らずに顕彰するなぞとんでもない」と反論している。