ボルソナロ大統領は11日、新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」を開始するに必要な法案二つを裁可し、同日付の号外版官報に掲載した。また、大統領は同日、連邦政府の予算から約93億レアルをアウシリオの財源に割り当てると宣言した。だが、パウロ・ゲデス経済相からは「アウシリオには恒常的な財源がない」として、プログラムの継続を疑問視する声がもれている。11、12日付現地紙、サイトが報じている。
今回裁可された二つの法案は11日に連邦議会が承認したもので、17日からのアウシリオ実動のための資金確保に躍起になっていたボルソナロ大統領は、即日裁可の上、号外版の官報に掲載した。
大統領は同日、法案裁可に先立って、アウシリオは市民省の持っていた予算から93億6千万レアルを受け取り、17日から滑り出すと宣言した。
裁可された法案の一つは、2020〜23年の連邦政府の多年度投資計画(PPA)に変更を加え、アウシリオを正式なプログラムとして盛り込むという内容のものだ。
改定後のPPAには、アウシリオの目的は「市民権(の擁護)と社会的な脆弱性克服を目指し、所得転移と公共政策に関する政局調整によって、貧困者や極貧者を減らし、困窮家庭を解放すること」と記されている。
アウシリオには、子供や妊婦への支援や極貧家庭への支援、スポーツや研究に従事する人への支援や農村部や市街地での生産性向上に向けた支援などが盛り込まれている。
この法案では、市民権の促進(Promoção da Cidadania)に関連する市民省のプログラムを、「連邦政府による運営の構造上の変化」(PPAに記載された最終プログラムへの移行)を理由に廃止している。
市民権促進プログラムは「ボルサ・ファミリア」(BF)をさしていたが、アウシリオは2021年の予算案に含まれず、資金源も明らかにされていないため、市民権促進プログラムとして記載することができないためだ。
二つ目に裁可された法案は、「ボウサ・ファミリア」にあてられていた予算の残りを「アウシリオ・ブラジル」に回すことを定めたものだ。同法案ではその理由を、所得転移のために組まれた予算の消滅を避けるためと説明している。
これにより、2004年から18年間続いていた「ボウサ・ファミリア」は、正式に幕を閉じた。これに関しては、アウシリオ創設のために出した8月10日付の暫定令(MP)で「90日間で失効」と宣言されていた。
アウシリオの支払いは17日から正式に行われる。支給対象は約1700万世帯で、最初の支給額は、ボウサ・ファミリアの平均支給額189レアルに17・84%の調整を加えた217・18レアルとなる。
大統領は、12月から2022年末までの平均支給額を400レアルにすることも約束している。ただ、それは、9日に下院で承認されたプレカトリオ(裁判所が支払いを命じた賠償金など)の支払い方法に関する憲法補足法案(PEC)が上院でも承認されることが絶対条件となる。
この裏で11日、パウロ・ゲデス経済相は、平均支給額を400レアルに引き上げることは自分の希望ではなかったことを改めて明言した。同相は、アウシリオの平均支給額を300レアルにすることを考えていたが、「所得税改革で資金を確保し、財政支出の上限内での支出をと考えていたが、所得税改革案は上院での審議が止まったままになっている。そこに大統領が、財源のあてもなく100レアルの上乗せを求めてきた」と語った。
ゲデス氏はまた、「政治家の中には600レアルを求めて圧力をかけてきた人もいたが、大統領がそれを400レアルにした」と政治的な圧力がかかっていたことも認めた。
アウシリオ創設を定めた暫定令は12月7日までに両院での承認を得ないと無効となる上、プレカトリオのPECや所得税改革の行方も不透明だ。
ゲデス経済相は、「アウシリオは恒常的な財源を持っておらず、移行型のプログラムとならざるを得ない」との表現で、プログラムの継続性を危惧している。