日本の醤油メーカー「キッコーマン」が1日、同社初となるブラジル産本醸造醤油の販売を開始した。同日、飲食業関係者向け記念試食イベントがサンパウロ市パウリスタ区の日本文化広報施設「JAPAN HOUSE」で行われた。
キッコーマン社はこれまでアジア、欧州、米国に計7つの生産拠点を持ち、自社の品質基準に沿った醤油を現地生産し、販売してきた。ブラジルには1980年代に進出し、自社製品の輸入販売を中心に活動。
2020年に醗酵食品製造の老舗アズマキリン社を子会社化し、現地生産の準備を本格化させた。今回のブラジル産醤油の販売開始により、ブラジルカンピーナス工場が同社8つ目の海外生産拠点となった。
販売開始となる醤油の正式名称は「KIKKOMAN SHOYU」。サイズ別に150ミリリットル、1リットル、5リットルの3種ある。飲食店向けの卸販売だけでなく、一般食料品店にも流通する予定で、値段は他社ブラジル産醤油の3倍ほどの高級価格帯に属する見込み。
原料の大豆、塩、小麦、水は全てブラジル産を使用。製造は本醸造方式で行われ、砂糖やうまみ調味料は使用しない。他のブラジル産醤油に比べ、香りが強く、赤橙色をしているのが特徴。日本から製造技術責任者を派遣し、同社の品質基準を満たす生産体勢を確立した。
国内生産を行うことで新鮮な醤油の市場供給が可能になり、為替変動などの影響を受けづらくなったことから、供給安定性が増した。南米諸国への輸出も行う見込み。
記念イベントには飲食業、メディア、日本政府関係者ら60人が出席。開会挨拶では日本から茂木修取締役専務執行役員国際事業本部長がオンライン参加して「大きな挑戦。日本品質の醤油を提供したい」と意気込みを語り、現地法人KIKKOMAN DO BRASIL社の尾崎英之社長は「ブラジルでは甘みが強く、色の黒い醤油が一般的。300年の歴史を持つキッコーマンの醤油で、ブラジルの家庭に新しい価値を提供したい」と抱負を述べた。
イベントでは、白石テルマ氏(和食レストラン「藍染」)による、キッコーマン醤油を用いた創作和食コースが振舞われた。試食会に参加したマルコス・マテさん(日本食品卸販売業)は「市場にある醤油の中で最高品質の味と感じた。多くの人に味わってもらいたい」と語った。