中銀が16日、通常は月曜日発表の経済動向予測調査「フォーラム」の結果を公表。それによると、市場関係者は年末の予測インフレ率を9・77%に引き上げた。
また、ガソリンなどの燃料費に電気代、食費などの高騰で広範囲消費者物価指数(IPCA)は12カ月間累積で10%超など、インフレ高進を肌で感じる機会は多い。インフレは低所得者ほど重く、所得減と購買力損失による買い控えで小売販売低下という結果も出ている。
現在は世界中が高インフレの中にあるが、ブラジルでは国外要因の他、水危機や電力危機、コロナ対策での不調和、三権間の緊張感、歳出上限法を曲げてでも新生活扶助策に移行しようとする事で生じた政情不安などで株式下落やドル高が起き、外国投資の減少なども招いている。ドル高も大きなインフレ圧力だ。
また、13日付フォーリャ紙は、「21世紀は02~03年と15~16年、現在の3回が2桁インフレ」と報じた。
02~03年は飢餓ゼロなどを謳い文句にして当選したルーラ政権の経済政策が見えず、ドル高が起きてインフレを招いた。15~16年はジウマ氏が各種調整を行った事でペダラーダ(財政責任法逃れの不正な財政政策)と騒がれ、ドル高や同氏罷免の動きが起き、インフレを招いた。
毎日の動きだけを見ていると、こういう動きは見えにくく、何十年単位で振り返る事も難しい。しかし、このような記事を見ると改めて、現在のブラジルが先行き不透明感の中にいると実感する。
16日付エスタード紙には現政権の経済政策はボルソナロ氏再選のためのものに集中しているとの記事もある。現政権は裁判所が命じた賠償金などの支払いを分割、先延ばしにする事で新生活扶助策(アウシリオ・ブラジル)のための財源を確保しようとしている。
だが、新生活扶助策がスタートしても、困窮国民は残る。歳出上限突破や新生活扶助策はインフレ高進を招くと予測されているが、負債の支払い先延ばしなどで生じる財政悪化防止策も語られていない。
中銀通貨政策担当理事は8日、必要なら経済基本金利(Selic)を1・5ポイント以上引き上げる可能性も示唆した。これも、Selic以外の術がなく、当面はインフレ抑制が困難な事や、少なくとも来年の大統領選までは収束は難しい事を窺わせる。
コロナ禍という不測の事態の後ではあるが、そんな今だからこそ、長期的な方策を望むのは無理なのだろうか。政治家個人の利害を最優先して選挙目当ての政策を強行するのではなく、国の将来を見据え、俯瞰的な視線から政策を立案することを期待したい。(み)