ボルソナロ大統領は16日、「プレカトリオ(裁判所が支払いを命じた賠償金など)の支払いに関する憲法補足法案(PEC)が正式に承認されたら、すべての公務員の給料をあげたい」と語った。そのための予算の確保は準備されていない。16、17日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領の発言は、バーレーンの首都マナマで行われた企業関係者を集めたイベントの席で行われた。中東訪問中の大統領は3日間滞在したアラブ首長国連邦のドバイを離れ、バーレーンに移っていた。
大統領はここで「パウロ・ゲデス経済相と話しているのだが、インフレが2桁台になっていることもあり、プレカトリオのPECが議会で承認されたら、公務員給与の引き上げを行うゆとりもできるはずだ」と語った。大統領は続けて「彼らにふさわしい額の調整はできないが、できる範囲で引き上げたい」と語った。
大統領は給与の引き上げに関して、「パンデミックの影響で2年間、給料が上がっていない。多くの人は職を失い、給料を減らされている人もいた」との見解を述べている。
大統領は給与の引き上げ幅に関しては語らなかったが、給与調整の対象者に関しては、「すべての公務員。例外はなしだ」と答えている。
プレカトリオのPECでは、連邦政府が抱える債務の分割払いを認めるなどの変更が加えられ、連邦政府が使える資金が約900億レアル増える。そのうちの500億レアルは17日から払い出しがはじまった新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」に回される予定だ。
だが、プレカトリオのPECで生じるゆとりでは、公務員の給与増のための計画は特に立てられていない。それどころか、同PECは下院こそ通過したものの、下院で認められたPECに上院が修正を加える可能性がある。
G1サイトなどが報じているところによると、現状の法案には、81人中35人の上議が反対の意向を示しているという。上院で承認されるためには49人の賛成が必要で、反対票は32票までにとどめないとならず、下院で承認された法案で計算した通りの資金繰りが認められるかさえ、見えていない状況だ。
また、下院で予算案の報告官をつとめたウゴ・レアル下議(社会民主党・PSD)は、今回の大統領発言を受け、「現在の財政支出の計画上、そのための金は割かれていない」として反論している。
その一方で大統領は、公務員の給料は上げても、「財政支出の上限を守るため」として、公共支出を連邦警察と道路警察に限るとも語っている。
大統領はこの会合では高失業率や高インフレのことについて触れず、「ブラジルは、効果を持たなかった隔離政策を行ったにもかかわらず、世界でもっとも経済的な打撃を受けなかった五つの国の一つに入っている」などとし、参加者に経済回復をアピールしようとしていた。
公務員の給与引き上げの話はドバイでも口にしていたが、経済省の職員らは何度も、「プレカトリオのPECが承認されても、公務員給与を調整するゆとりはない」と忠告していた。
上院議員たちは17日も、「そんなゆとりなんてあるはずがない」と明言。アウシリオ・ブラジルの支給額引き上げの時同様、景気回復をアピールし、人気回復を図りたい大統領が経済省を無視して行った発言が一人歩きし、批判を高める事態を発生させたようだ。