21日、国内最大の学力テストで、多くの大学の入試やその一部を兼ねた「国家高等教育試験(ENEM)」第1日目が行われた。この試験を統括、運営する国立教育院(Inep)で職員が大量辞職し、ボルソナロ大統領が教育介入を怪しまれる発言を行ったものの、その影響は感じさせず、むしろ連邦政府が歓迎しない出題傾向も見受けられた。21、22日付現地紙、サイトが報じている。
今回のENEMは、主催のInepの職員37人が5~8日に辞表を提出し、ダニーロ・ドゥパス・リベイロ院長の辞任を求める騒ぎも起きた。
また、ボルソナロ大統領が「これでENEMに連邦政府の色が出る」との発言を行い、物議を醸した。試験開始直前には「軍事政権発足につながったクーデターを革命と呼ぶよう、大統領が求めた」などの疑惑の報道が行われるなど、これまでにない物々しい状態で試験日を迎えた。
だが、言語(ポルトガル語、外国語など)、人文科学(歴史、地理、哲学)、小論文の試験だった初日は、ボルソナロ大統領の影響をうかがわせる出題傾向は特に見られなかった。
毎年、もっとも注目を浴びる小論文のテーマは、「不可視性と市民登録:市民権へのアクセスの保証」という、人権に関するものだった。
このテーマを取り上げたことに対する教育界の権威たちの評価は高く、「現在も何千人もの子供たちが、最も基本的な権利である出生届さえ出してもらえず、教育その他の受けてしかるべき権利が享受できない現状にいる中、非常に重要なものだ」などの声があがっている。
言語や人文科学の出題では、3年連続で軍事政権に絡むものは見られなかった。また、「人種差別」「奴隷制度」「女性の性の商品化」「先住民問題」など、ボルソナロ氏が好まないとされるテーマ性のものが見受けられた。
さらに、歌手ゼー・ラマーリョの1979年のヒット曲「アジミラーヴェル・ガド・ノヴォ(驚くべき新しい牛)」などが引用されたことも話題となった。この件に関してラマーリョ本人は、「軍事政権の時に書いた曲が今、こうして試験に出されることに驚いた」と語り、「あの曲で描いたことは現在の政治状況に通じる」と意味深長な発言を行っている。
ボルソナロ大統領は22日、ENEMに関し、「連邦政府の色が出ずに残念だ」「まだイデオロギーにとらわれている」などの発言を行っている。
ENEM第2日目の28日は、自然科学(化学、物理、生物)、数学の試験が行われる。