「こういう人たちにジウマ氏は大統領を罷免されたのか」。そう思いはじめたのは、つい最近のことではない。同氏を罷免にかけた当時の下院議長エドゥアルド・クーニャ氏は、ラヴァ・ジャット作戦の収賄疑惑で下議罷免にあい、すぐに逮捕。14年の大統領選で有力な証拠もないままにジウマ氏を選挙違反で訴え、同氏にネガティヴなイメージを与えたアエシオ・ネーヴェス氏は2017年に収賄の現行犯で逮捕直前まで行き政治家としての権威が失墜していたからだ。
また、ジウマ氏の親玉に実刑判決を下したラヴァ・ジャット作戦班と担当判事のセルジオ・モロ氏は「ヴァザ・ジャット・スキャンダル」での携帯電話の記録漏洩で、企業家に不利になる証言をさせようとしていた疑惑が浮上し、その後にルーラ氏も釈放で裁判も無効に。「当時の騒ぎは何だったのだ」と思わせることが続いていた。
そこに最近、コラム子的に幻滅しているのがジャナイーナ・パスコアル氏。ジウマ氏の罷免請求を作成した弁護士の一人で、髪を振り乱しての情熱的なアピールで有名になり、2018年のサンパウロ州議選で当時のボルソナロ氏と同じ社会自由党(PSL)から出馬して脚光を浴びた、その人だ。
彼女に関しては長らく「保守派」ということは知られていたが、具体的にどんな思想を持った人かまでは知らなかった。だが、ここ数カ月でそれが明らかになってきている。
まずひとつが今年8月、サンパウロ市で人道派としてつとに有名なジュリオ・ランセロッティ牧師に対し「薬物中毒の路上生活者に食物を与えることは犯罪に加勢することだ」と発言。ネット上で厳しく批判された。
そして11月、ジャナイーナ氏はボルソナロ大統領が「マリ・フェレール法」の採択を行うと、「大統領は(極左政党の)社会主義自由党の党首にでもなったのか」とネット上で大騒ぎした。
この法律は、強姦被害を訴えた女性に対し、犯人の弁護士が裁判中に被害者女性の過去を暴いて名誉を毀損するような言動を禁じるものだ。性被害を受けた女性を守る法律に関し、自分が女性で弁護士という立場でありながら、この法律を「極左のもの」と呼べる了見の狭さはいかがなものだろう。
今から振り返ってみると、ジャナイーナ氏が大統領罷免を求めたのは、ジウマ氏の犯罪性を正義の立場から問いただしたかったからではなく、「左派政治家」をただ単に陥れたかっただけなのではないかと勘ぐりたくなる。
ジャナイーナ氏のこうした実像が先に知れ渡っていたら、もしかしたら違う歴史が生まれていたのかもしれない。(陽)
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