国家水上輸送庁(Antaq)が22日、温室効果ガス排出に伴う気候変動がブラジルの港湾部門に経済的な損失をもたらす可能性があるとする研究結果を発表したと、22日付アジェンシア・ブラジル、23日付エスタード紙などが報じた。
気候変動やその影響は世界的な問題で、大雨や干ばつ、嵐、海面上昇などの報告は世界中から寄せられている。
Antaqによると、気候変動によって大風や高波、嵐、海面上昇といった自然現象が増えると、港湾ターミナルの脆弱性が高まり、経済的な損失が生じるという。
同庁では全国の公共の港21カ所のリスクを場面別に分析しており、大風の被害が起こる可能性が高いのは、サンタカタリーナ州インビトゥーバ港、サンパウロ州サントス港、ペルナンブコ州レシフェ港、リオ・グランデ・ド・スル州リオ・グランデ港、バイア州サルバドール港、パラナ州パラナグア港、リオ・グランデ・ド・スル州イタグアイー港と続く。
嵐が起きる可能性がある上位3港は、リオ・グランデ港、バイア州アラトゥ・カンデイアス港、パライバ州カベデロ港、2030~2050年に海面上昇が起きる可能性がある上位3港は、アラトゥ・カンデイアス港、リオ・グランデ港、パラナグア港となっている。
Antaqが研究対象とした21の港の内、大風の被害を受ける可能性があるとして列記した七つの港は、現時点でも気候変動で増える自然現象に伴うリスクが高い/非常に高いと評価されている。2050年にはこの数が16に増えると予想されている。
大風で生じるリスクには、安定した機材のオペレーションが困難になって物や港の動きが止まる、港やターミナルにアクセスできなくなるなどが挙げられる。
嵐や海面上昇では、船の中や倉庫の浸水、貨物が水に浸かってダメになるなどの被害が起こり得る。港やターミナルに限定しなければ、洪水や土砂崩れも港湾へのアクセスや物流を妨げ、海運業や輸送部門の被害を拡大する。嵐に伴うリスクが高い/非常に高いとされたのは10港、海面上昇によるリスクが高い/非常に高いとされているのは11港あった。
Antaqでは、気候変動によってリスクを伴うような自然現象が増えている事に配慮した公共政策の策定や、気候変動に対応できるようなインフラ整備への基準作りなどを進める意向だ。
ブラジルの場合、国内総生産(GDP)の14・2%に相当する年間2930億レアルは港湾とその関連部門で動いており、輸出入品目の95%は港湾を介して流通しているという。
Antaqでは、気候変動に伴う大風や嵐、海面上昇といった自然現象が増えると、港湾部門の活動が止まり、同部門や周辺地域はもちろん、貨物の配送先や貨物を送り出す地域の経済や、全国的な物の供給にも影響するとの見解も表明した。
今回の研究は、気候変動やそれを示す自然現象はブラジルでも既に確認できるものである事やそのインパクトは年毎に増している事、早急に対策をとらなければ港湾部門や地域、国家レベルで甚大な損失が生じ得る事を示している。