欧州やアジアで南アフリカを起源とする新型コロナウイルスの新変異株による感染が確認され、英国が入国制限を決めるなど、世界中に危機感が広まっている。南米での感染確認はまだだが、国家衛生監督庁(Anvisa)が26日、南アフリカなどからの旅行者の入国制限を連邦政府に求めたと25、26日付ブラジル国内サイトが報じた。
新変異株出現は世界の主要な株式市場を揺るがせ、ブラジルでも26日午前11時半にはIBOVESPAが3%超下落し、今後の指数の方向性の鍵を握るとされる10万2500ポイント前後となった。このまま下降傾向に入れば、昨年10月に記録した9万3000ポイントに向けて暴落する可能性が出てきたと見るアナリストも出ている。為替もドル高に振れ、1ドル=5・6レアル前後となっている。
新変異株B1.1.529は、ウイルス粒子の最も外側にあり、新型コロナウイルスに対するワクチンの多くが抗体を生じさせるために使うスパイクタンパク質に32の変異が認められ、他の部分も入れると50に及ぶ変異が生じている。
新株の感染力や致死率は不明だが、専門家はかつてない程の変異が生じており、ワクチン接種完了者も感染する可能性があると見ている。英国は25日、南アフリカなど6カ国からの航空便受け入れを禁じ、これらの国を旅行した英国人には隔離を義務付けた。
最初の症例は1日にボツワナで見つかり、3日後には南アフリカでも症例が確認された。香港では、12日に南アフリカから帰国し、その時の検査では陰性だった男性が13日に陽性となり、同株感染確認など、25日の時点で最低10例の報告ありと報じられた。
また、26日にはベルギーで欧州初の同株感染者が確認されており、入国制限や隔離義務化などの水際対策を強化する国が続出している。
ブラジルではAnvisaが26日、南アフリカ、ボツワナ、レソト、スワティニ、ナミビア、ジンバフエの6カ国からの航空便と旅行者受け入れ制限を連邦政府に求めた。
Anvisaは12日も、年末の往来増加による感染再燃回避のため、国籍を問わず、入国時にワクチン接種完了を示す証明書と陰性証明の提示を義務付けるよう、連邦政府に進言している。サンパウロ市なども同様の要請を保健省に出している。
だが、アンデルソン・トレス法務相は25日、Anvisaの進言を受け入れないとの意向を表明。新型コロナ対策としての入国管理(規制)は法務相とマルセロ・ケイロガ保健相、タルシジオ・デ・フレイタス・インフラ相、シロ・ノゲイラ官房長官の管轄だ。法務相発言が正式見解かは不明だが、現地サイトは「ワクチン接種義務化に反対する大統領の意向を反映」と報じている。
ボルソナロ大統領は26日も「国境封鎖なんてとんでもない」と発言しており、Anvisaの要請却下への懸念の声が出ている。
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