【既報関連】21日にはじまったが、アプリの不具合で中断されていた、来年の大統領選のための民主社会党(PSDB)の候補を決めるための党内選挙が27日に再開された。その結果、サンパウロ州知事のジョアン・ドリア氏がリオ・グランデ・ド・スル州知事のエドゥアルド・レイテ氏を破って、22年大統領選の同党の候補に選ばれた。27~29日付現地紙、サイトが報じている。
党内選挙の投票は21日にはじまったが、投票用のアプリが顔認証で不具合を起こしたため、党員や候補者からの苦情を受け、投票を中断。4万4千人の事前登録者のうち、わずか8%の票を登録しただけで止まっていた。その後も1度、代替アプリのテストで失敗。28日までに党の候補を決定するという、当初の予定が守られるか、不安視された。
だが、25日夜から26日未明にかけて行ったビー・ヴォーター社のアプリのテストが成功。27日に投票を再開すると、その日のうちに結果が判明した。
21日に登録され、保管されていた票と27日に投じられた票を集計した結果、ドリア氏が53・99%を獲得。1回目の投票で50%以上の支持を得たため、同党の規定により、次期大統領選候補に選出された。
ドリア氏の対抗馬とされ、決選投票までもつれ込むかと思われていたレイテ氏は44・66%、アマゾナス州マナウス市元市長のアルトゥール・ヴィルジリオ氏は1・35%だった。
レイテ氏は企業家出身のドリア氏に反感を抱く2014年の大統領候補のアエシオ・ネーヴェス氏やタッソ・ジェレイサッチ元党首、2018年の選挙の際にドリア氏と仲違いを起こしたジェラウド・アウキミン元サンパウロ州知事など、党の大物たちの支持を得たが、最終的には「反ルーラ、反ボルソナロ」をより強く訴えたドリア氏が党内の支持を得ることとなった。
ドリア氏がレイテ氏に及ばなかったのは市議たちの票のみで、市長や副市長、知事や副知事、上議と大統領経験者といった党の重鎮(エリート党員)では、僅差ながらレイテ氏をリードした。ドリア有利が最も鮮明になったのは役職などを持たない一般党員からの票で、1万5646票対9387票という大差がついた。
当選後の演説でもドリア氏の主張は明確だった。ドリア氏は、「最も貧しい人たちを優先した政治と言っておきながら、汚職で公金を盗んだ」としてルーラ氏、ジウマ氏の労働者党(PT)政権を批判し、「特にジウマ政権の杜撰な政策で経済がガタガタになった」と批判した。
さらにドリア氏は、ボルソナロ氏は「夢だと言って売り込み、悪夢を手渡した」と酷評。「友愛の国であるブラジルを傲慢な政治と民主主義への暴力、マスコミへの攻撃を通して、家族や友人たちが強調も団結もせず、憎しみ戦いあう国にしてしまった」と語った。
一方、アプリの不調で投票が中断されたことで、結果に異議を申し立てることも考えられていたレイテ氏は、敗戦を認め、ドリア氏の勝利を祝った。だが、来年の大統領選の参謀役をと乞われたときは、「知事としての務めを果たしつつ、国政レベルの選挙に関わることは困難」との理由で、「参謀役は務められない」と語っている。
ブルーノ・アラウージョ党首は21日の時点で、今回の党内選挙が党内の分裂を招いたことを認め、「党内選挙の勝者は党内部に生じた傷を思い出し、党内を一つにまとめることに努める必要がある」と語っている。
PSDBの候補者が、ルーラ氏とボルソナロ氏の間に立つ「第3の道」となるためには、中道を語る諸政党との調和、協調が不可欠だが、ドリア氏の最初の課題は、来年の党大会までに党を一丸とすることといえる。
他方、ドリア氏が大統領候補になったことで、同氏と対立していたアウキミン氏の離党が確実なものになったとの見方も強まっている。アウキミン氏はブラジル社会党(PSB)に移籍してルーラ氏の副候補になることが噂されている。だが、アウキミン氏とルーラ氏とのシャッパ(連名式名簿)に関してもまだ、紆余曲折がありそうだ。
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アプリの不具合で大騒ぎとなった、来年の大統領選の候補選びのための民主社会党(PSDB)の党内選挙は、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事が過半数獲得で勝利を決め、決着が着いた。サンパウロ州民としては、州にゆかりのある人が大統領候補になることは嬉しいことではある。だがネット上では、2018年のサンパウロ州知事選の際に「ボルソドリア」と称してボルソナロ氏の支持者に自身への投票を呼びかけたことを皮肉り、「ボルソナロ氏の批判に説得力がない」とする声が目立つ。さらには、「今度はモロドリアに転じるのではないか」と、大統領選で現状、自身よりも支持率が高いセルジオ・モロ氏へ擦り寄るのではと皮肉られている。もっとも大統領選ではモロ氏に勝たなければならないのだが。