11月29日、教育省傘下の大学院生育成機関、ハイレベル人材育成業務統括所(Capes)につとめる研究員52人が一斉に辞表を提出する事態が起きた。教育省では、11月初旬に国立教育研究院(Inep)の職員37人が大量辞職したばかりで、激震が続いている。11月29日、30日付現地紙、サイトが報じている。
Capesは修士課程、博士課程の教育制度を促進し、大学院生向けのプログラムを提供している教育機関の評価(等級付け)なども行う国の機関だ。高度な専門知識を持つ人材の育成を促進する機関であるため、工業をはじめとした産業界には不可欠な存在だ。その機関で、コーディネイター6人とコンサルタント46人がまとまって辞表を提出する異例の事態が起きた。
辞めた人たちの内訳は、数学や統計などを担当する部門と、天文学や物理を担当する部門で、前者ではコーディネイター3人とコンサルタント28人、後者でもコーディネイター3人とコンサルタント18人が辞任した。
職員たちは辞任の理由として、学術的なレベルに即した研究に見合う予算が確保されていないなどの支援の不足をあげている。また、全国の大学院を部門別に四つに分け、1年に一度のペースで行われていた教育機関の評価が司法判断によって打ち切られたが、それに対して、Capesが何の行動も起こしていないことも、理由のひとつにあげている。
この司法判断は9月22日に連邦検察庁が起こした訴えに対し、連邦地裁が下したものだ。これによって、来年4月までに完了する予定だった、数学や統計などに関する分野の内容を扱う大学院の評価(査定)が中断し、年度内に終了する見込みさえ立たなくなっている。
また、Cepasが遠隔授業による講座開設を優先し、既存の大学院が開設している講座の内容や、以前の評価で指摘された問題点が改善されているかを確認する作業がないがしろにされていることも、集団で辞表を提出した理由とされている。
物理と天文学のコーディネーターだったフェルナンド・ラーザロ・フレイレ氏は、「現在のCapesは大学院の評価ではなく、新しいコースの開設が優先事項になっている。特に、通信教育課程での講座開設が最優先されている」と批判している。
教育省では、国家高等教育試験(ENEM)を2週間後に控えた11月5日と8日に、ENEMを主催するInepの職員37人が集団辞職しており、Inepのダニーロ・デュパス・リベイロ院長が監督能力がないとして辞任を求められる騒動が起きたばかりだった。
たった一月の間に傘下の二つの機関で大量辞職が相次いだことで、ミウトン・リベイロ教育相の責任を問う声も大きくなりそうだ。同相は4月にCapesの所長を理由も説明せずに解任しており、各機関の運営や働きに対する判断や措置に諸方面から疑問の声が出ている。現Cepas所長には、リベイロ教育相に所縁の深い母校の学長が任命されている。