上院で1日、ボルソナロ大統領によって7月に最高裁判事候補に指名されたアンドレ・メンドンサ氏(48歳)の口頭試問(サバチーナ)が行われ、憲政委員会(CCJ)、本会議投票の双方で過半数を得たことで、新判事として承認された。大統領から「筋金入りの福音派」と称されたメンドンサ氏は、サバチーナ開催までに4カ月間待たされた上、史上最長の8時間のサバチーナを受けた末、必ずしも福音派的とは言えない言動も行い、承認を受けた。1、2日付現地紙、サイトが報じている。
メンドンサ氏は国家総弁護庁(AGU)長官や法相を歴任し、司法界での実績はあったが、自身の職務以上に福音派を増やす人事に走るなどの傾向、また、パンデミック時に隔離政策を嫌うボルソナロ氏に協力する姿勢などを見せたため、上院では同氏を嫌う人が多かった。
そうしたことから、CCJのダヴィ・アルコルンブレ委員長はメンドンサ氏が7月に指名を受けていたにもかかわらず、サバチーナの開催を長期にわたって固辞。今回の口頭試問は上院議長などからの要請でようやく実現したもので、「不承認とならない限り、やりたくない」と、直前まで語っていた。
そうしたこともあり、メンドンサ氏はサバチーナでこれまでの候補以上に厳しい質問攻めにあった。だが、メンドンサ氏はそれをあらかじめ予想してか、過度に福音派の印象を与える返答を避けた。
大統領が出した銃規制緩和の条例に関しては、「最高裁の審理となるので、今の自分からは言えない」としながらも、「銃を使っての自衛の権利は尊重されるが、どのあたりまで許容されるかが問題となる」と答えた。
また、ラヴァ・ジャット作戦で問題となった報奨付証言(デラソン・プレミアーダ)に関しても、「デラソンは証拠とは言えない」とし、反対の立場をとった。デラソンはセルジオ・モロ氏がラヴァ・ジャット担当判事時代に重要視してきた方法だが、メンドンサ氏が承認されれば入ることになる最高裁第2小法廷はモロ氏のラヴァ・ジャット裁判に対し、「偏った判決だった」との判断を下している。
メンドンサ氏はさらに、政教分離を守り、特定の宗教に特権を与えたりしない「世俗国家(Estado laico) 」を支持。同性愛結婚に関しても、「それは憲法で認められた権利だから」として、支持する発言を行い、一部の福音派を驚かせた。
また、民主主義に関しては、「ブラジルは流血なしでそれを獲得できた」と発言。だが、「19世紀の他国の革命を念頭に置いて軍事政権を忘れていた」と付け加え、謝罪した。ボルソナロ氏は反連邦議会、最高裁の「反民主主義デモ」にも参加したが、メンドンサ氏はこの日、大統領の言動に関する発言は避けた。
この結果、CCJでの投票で、メンドンサ氏は18対9で承認された。それを受けた全体投票(本会議)でも、当初は「難しい」と見られていた41票を超え、47票(反対32票)で承認された。
メンドンサ氏は75歳になる2047年まで最高裁に在籍できることとなった。同氏の就任は今月の16日となる見込みだ。
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1日の話題を独占し、最高裁新判事への指名が承認されたアンドレ・メンドンサ氏。サバチーナ(口頭試問)の様子はテレビやネットでも報じられたが、人々の注目は質疑応答以上に、これまでのイメージより明らかに増えていた同氏の髪の量に集まり、「植毛したのか、かつらなのか」などのツイートが目立っていた。見た目の印象をあげたのも功を奏したか。