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《サンパウロ市》寄付減少で食料確保困難に=食料品セットや弁当に長蛇の列

朝早くから並んで確保した基礎食料品セットを運ぶモデスト氏(3日付G1サイトの記事の一部)

 新型コロナのワクチン接種が進み、経済活動も回復し始めたが、その一方で、貧困家庭への寄付などは減っており、サンパウロ市のスラム街では基礎食料品セットや弁当などの配布を待つ人達が早い時間から長蛇の列を作っていると3日付G1サイトなどが報じた。
 サンパウロ市南部のスラム街、パライゾポリスはその一例だ。同スラム街では3日の朝も、基礎食料品セットや弁当を待つ人の列ができていた。
 失業中で、水道代や電気代、薬代を払うとほとんど金が残らないため、なんとしても食料品セットを受け取りたいと考えていたドミンゴス・モデスト氏は、無駄足に終わらないよう、朝早くから列に並んだ。
 年金生活者で失業中の息子と暮らしているヴァルジール・カルネイロ・ダ・シルヴァ氏も、年金だけでは食べていけず、食料品セットを受け取りたくて列に並んだ。
 「肉は高くて買えないし、代わりにしていた鶏肉ももう手が出ない。米と豆があればそれを食べるけど、それさえない時がある。誰かが家に来て冷蔵庫を開けても、何もない。何度恥ずかしい思いをした事か」とシルヴァ氏は語る。
 この日、スラムに届いた寄付の基礎食料品セットは1千組で、二人共受け取る事ができた。だが、ボランティア達が寄付の食材などを使って作る弁当は、パンデミックの始まった頃は1日に1万食が提供されていたのに、現在は1千食にも満たないため、もらいたくてももらえない人が続出する。

 「弁当はなくなったのに人の列は残っているという光景を見ると悲しくなる」というのは、手作り弁当の無料配布プロジェクトを始めたジュリアナ・ダ・コスタ・ゴメス氏だ。2日の場合、弁当を待つ人の方が弁当の数より多く、少なくとも100人がお昼を食べ損なったという。
 自分と夫の弁当確保のため、正午からの配布なのに10時から並ぶというのはデリスファ・マリア・デ・ジェズス氏だ。北東部に住んでいた頃はマンジョッカ(キャッサバ)の粉に水を混ぜただけという食事をしていた事もある同氏にとり、ご飯とおかずが揃っている弁当は1日で一番上等な食事だという。
 ゴメス氏は、「豆の煮物と肉、野菜にご飯という弁当には、食べ物と共に、たくさんの愛情とたくさんの慈しみ、そして、それよりももっと大きな『希望』というメッセージが込められている」と強調する。
 肌と肌を合わせるほど身近に過ごす事はできなくても、「私達のコミュニティを守るために心を一つにし、力を合わせている」というゴメス氏達は、寄付が減り、材料確保が難しくなる中でもなお、失業や貧困に立ち向かわなければならない人達に生きていく糧と希望を届け続けている。