「助けて! お父さんがお母さんを殴ってる。警察を呼んで」――。ブラジル北部のロライマ州で、13歳の少女がこんなメッセージを試験用紙に残した事で、家庭内暴力で苦しんでいた母親が救出されるというドラマが起きたと2日付G1サイトなどが報じた。
試験用紙の片隅に母親が家庭内暴力で苦しんでいるというメッセージを残したのは、ヴァーレ・ド・アナリ市に住む13歳の少女だ。SNSにも掲載されたメッセージは同市から54キロ離れたマシャジーニョ・ドエステ市の警察に伝えられ、一緒に記載されていた住所に向かった警官達が母親を救出した。
だが、長年にわたる肉体的、精神的な暴力で心身ともにズタズタになっていた母親は、警官から質問されても家庭内暴力が起きていた事を認めようとせず、救出には忍耐と力を要したという。
母親が何も話そうとしないため、警官達は5時間以上をかけて事情を聞こうとし、家を出るように説得したのだ。最終的には、両側から抱きかかえるようにして家から連れ出し、法医学研究所で身体検査を行った上で親戚の家に預ける事になったのだが、法医学研究所でも医師の前で衣服をとる事を拒んだという。
同件担当の警部によると、家庭内暴力が始まったのは一家がまだパラー州に住んでいた時で、まだ1歳か2歳だった長男が穀物納屋に入り込み、ネズミ用の毒を食べて死んだ事で、「あいつが死んだのはお前のせいだ」と言い、圧力をかける事で精神的な虐待を始めたという。
担当警部は既に女性とその夫、子供達からの事情聴取を行い、これからは諸事情を知る人達からの証言も取る予定だが、12年間のキャリアの中でも、今回のような非人道的な例は見た事がないという。
女性は夫が子供達を殴ったりした事はないと証言したが、子供の一人が、父親が娘の一人に暴行を加えた上、「出て行け」と命じたと供述。また、「出て行け」といわれて家を出た子供達は身を寄せるところがなく、町にあるラジオ局の職員に助けを求めたため、児童相談所に引き取られた事も明らかになった。
この女性には16歳と14歳、13歳の3人の娘と8歳の息子がおり、子供達は全員、児童相談所に預けられている。
被害者の女性は、担当警部の要請で精神科医とソーシャルワーカーのケアも受けているが、加害者の男性はまだ捕まっていないという。