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《ブラジル》プレカトリオPECを上院承認=下院案に大幅修正加え=PTの上議らも賛成票投ず=アウシリオは大統領の希望通りに

2日のベゼーラ上議(Jefferson Rudy/Agencia Brasil)

 2日、上院でプレカトリオ(裁判所が支払いを命じた賠償金など)の支払い方法などに関する憲法補足法案(PEC)の審議が行われ、下院で承認されたものに大幅な変更を加えた上で承認された。同PECは、ボルソナロ政権が労働者党(PT)政権時に作った社会保障プログラム「ボルサ・ファミリア」を発展的解消させた「アウシリオ・ブラジル」の資金捻出に不可欠なもののため、PTの出方に注目が集まったが、同党の上議らも賛成票を投じた。2、3日付現地紙、サイトが報じている。
 プレカトリオのPECは、11月からのアウシリオ・ブラジル導入と支給額引き上に不可欠とされてきた。だが、その審議が遅れた上、11月に下院で審議された際も、連邦政府の歳出上限を破ることになるため強い反対が予想された。
 だが、予算案審議時の報告官の裁量で支出できる秘密予算の中から多額の支出を行ったり、歳出上限法に触れないよう、PECの一部を修正したりした上、ブラジル社会党(PSB)、民主労働党(PDT)などの中道左派政党の説得工作も行ったことなどで、かろうじて、下院での2度の承認を得た。
 だが、その当時から、かねてから下院より左派勢力が強い上院では、さらなる苦戦は必至と見られていた。
 このため、上院の憲政委員会(CCJ)では最初から、下院が承認した法案に修正を加えることを前提に審議が進められ、政府側の歩みよりも得た修正案を承認し、本会議に臨んだ。
 このため、2日の上院本会議での投票では、1回目が64対13、2回目の投票でも61対10という結果で、同PECが承認された。
 2日の上院での審議ではPTの上議たちも賛成票を投じたが、民主労働党(PDT)の上議は、下院での第1回目の投票時に賛成票を投じて大統領候補のシロ・ゴメス氏が激怒したことで、第2回目の投票では反対票を投じたのに倣い、反対票を投じた。

 上院での審議が順調に進んだのは、憲政委員会での修正作業のおかげだ。ここでは、上院の政府側リーダーで同PEC報告官のフェルナンド・ベゼーラ・コエーリョ上議(民主運動・MDB)が主導する形で様々な調整が加えられた。
 最も重要な変更は、連邦政府が社会民主党(PSD)の進言を受け入れ、下院でも難色を示されていた基礎教育開発基金(Fundef)をプレカトリオの対象から外したことだ。同党は上院で2番目に多い12人の上議を擁しており、下院が承認した案のままだと、オットー・アレンカール上議らに猛反対されることが予想されていた。
 また、上議たちからの圧力で、「2026年までに生じたPEC承認による資金面でのゆとりは必ず、所得転移や社会福祉、社会保障などの社会関係の費用に回す」「プレカトリオを分割せずに支払う年間上限額の適用期間を2036年までから2026年までに短縮する」などの変更が加えられた。
 こうした努力により、11月30日に行われたCCJでは、プレカトリオのPECは16対10でCCJの承認を得ていたが、ベゼーラ上議は本会議での審議の直前にも、優先的に支払うべきプレカトリオかなどについて話し合うための合同公聴会開催についての文言を持ち込むなどの要請に応じている。
 PTの上議たちは「政府側に寝返った」との批判に対し、同PECに賛成したのは、「より多くの受給者が恩恵を受けられるように配慮した」からで、「プレカトリオの支払いに遅延が生じることには反対した」として、正当化している。
 上院で修正、承認されたPECは下院に戻され、再審議される。これが承認されれば、ボルソナロ大統領の主張する「平均支給額400レアル」の実現に近づくことになる。