ブラジルではナタール(クリスマス)に、郵便局が「パパイ・ノエル(サンタクロース)」という名前のキャンペーンを行う。貧しい家庭の子供達が書いた手紙を見た人々がサンタ役になり、郵便局を通して希望の品を届けるというもので、多くの子供は人形や玩具、衣類などを希望する。
だが、サンタへの手紙を書くのは郵便局のキャンペーンだけではない。南大河州南部アロイオ・グランデの小学1年生、エクトル君(7)のように、先生に促されて書いた手紙もあるのだ。両親と兄弟3人との6人家族の同君は、覚えたての字を連ね、「僕の夢は肉をもらい、家族と一緒に過ごす事」と書いた。
一家はパンデミックで収入がなくなり、電気代が払えずに電気が切られた上、水道も切られそうになったが、友人や隣人の助けを得て水道代を払い、かろうじて切られずに済んだという。母親は健康上の理由で働けないため、父親と長女のアルバイトで暮らしている。
だが、エクトル君はいつも、自分の事よりも周りの人の事を考えるという優しさを忘れない。サンタへの希望も、シュラスコ(バーベキュー)が大好きなのに、昨年のナタールにもらった肉を食べて以来、赤身の肉は食べられずにいる中、母親に「ナタールには肉が食べられる?」と訊いたところ、「難しいと思うわ」と言われたのを思い出して書いたものだ。
息子が書いたサンタへの手紙を見て、なんとかしたいと思った母親が、SNSにその写真を掲載した。すると、名も知らぬ人達までが支援の手を伸ばし、食料を届けたり、口座に金を振り込んだりし始めたという。
別の日には、「家でツリーを飾った事がない」という少年がごみ処理場で見つけた小さなツリーを手にした写真がネット上に流れた後、心動かされた人達が集めた寄付金が届けられ、12歳にして初めて、ツリーを飾ってナタールを過ごすという話が報じられた。
また、フォルタレーザでごみ収集車の中に頭を突っ込み、食べ物を探している人達の姿を映したビデオが流れた後、食料品などが届けられたという話もあった。
ナタールに読まれる聖書箇所の一つに、「やみの中を歩んでいた民は、大きな光を見た」という言葉がある。コロナ禍や貧困などの闇の深さや濃さは一人ひとり違い、人生の闇を感じる程度も違うが、闇が濃いほど光は強く感じられる。一人でも多くの人が心の中に灯を感じ、希望と平安、喜びを覚える季節であるよう願い、祈らされる。
(み)