日本の特撮映画のヒーロー「ゴジラ」の生誕60周年を記念し、リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街にブラジル人アーティストらがゴジラの巨大壁画を描いた。その立派な壁画は、世界的ヒットとなった同作品がいかに当地でも愛されたかの証明に見える▼40代のブラジル人女性が「こういう日本の特撮映画やヒーロー物が大好きで、日系人と結婚もした」と語るのを聞き、日本愛好家を増やす特撮モノの影響力はアニメ・マンガ並みだと感じた▼リオの大学で映画を学ぶルーカス・ストゥヴォクさんはゴジラの熱狂的なファン。ニュースサイト「カデルノG」によると、ゴジラを愛するあまり、今年、フェイスブックページ「GOZIRA BRASIL」も立ち上げた。5歳で初めてゴジラの存在を知り、29作品を制覇、「後にその怪獣が核兵器の脅威を象徴していると知り、更にのめりこんだ」とある▼ゴジラは水爆実験で蘇った怪獣という設定だ。当時、冷戦中だった米ソは核兵器開発を推進、米国はビキニ環礁で核実験を重ねていた。ゴジラが誕生した54年は、奇しくも日本のマグロ漁船第5福竜丸が死の灰を浴びた年。同シリーズはヒロシマ・ナガサキに続く3度目の核被害への恐怖と反省を、人類史上に刻むことになった▼人類が生んだ核兵器という〃怪物〃が、今度は人類を滅ぼしにかかるというメッセージ性は、シリーズが国内外を問わず人々を魅了する一つの理由だろう。先日ハリウッドが公開した新作には、震災や原発事故も描かれた。誕生から60年を経た今も、ある意味、ゴジラは〃反核の大使〃として日本の反核メッセージを世界に向けて発信している。(阿)