ブラジル国籍を持つサッカー選手にとって、自国開催となる今年のW杯にセレソンに選ばれるのは大きな夢だ。だが、サッカー大国ブラジルでその夢の枠は23人分しかない。
そのため、選手によっては他の国の代表選手として参加する例も珍しくない。かつては日本代表でも呂比須やサントスのようなブラジル人選手が出場を果たした例もある。そして今年、開幕戦でブラジル・セレソンと対戦するクロアチアの代表にも同国に帰化した2人のブラジル人選手が参加する可能性がある。
もともとクロアチアは、ジナモ・ザグレブなどの国内の強豪クラブがチーム強化の一環としてブラジル人選手を多く受け入れ、ブラジル人選手も「欧州本格進出のための通過点」的なイメージでこれらのチームに加入してきている。今回クロアチア代表候補に選ばれたエドゥアルドとサミールもそうしたいきさつでクロアチアに来た選手だった。
リオ出身で現在31歳のベテラン選手エドゥアルドは最終選考の23人に入ることが確実視されている選手の一人だ。エドゥアルドは16歳だった99年にザグレブ入りし、そこで8年間プレーしたあと、2007年にイングランドの強豪アーセナルに入団した。活躍いかんではブラジルのセレソン入りも期待されたが、2008年の試合中に左の腓骨を骨折。回復には1年かかり、誰もが以前のようなプレーは出来ないと思っていた。
ところが、10年にウクライナのシャフタル・ドネツクに入ったエドゥアルドは、11日に決まった同国選手権優勝など様々なタイトル獲得に貢献。この功績が認められたエドゥアルドは、8年在籍したクロアチアでの代表候補入りの朗報は14日に受けた。「これでこれまでのことは帳消しになった。開幕戦では2国分の国歌を歌いたい」と語る。
一方、バイア州イタブーナ出身のサミールは、17歳だった2005年にブラジルのU17(17歳以下)のセレソンに選出され、そこからザグレブで8年プレーして活躍した。サミールはそのうちクロアチアでの代表入りを希望するようになり、既に何度か召集も受けるようになっていたが、今年に入りスペイン・リーグのゲタフェに移籍した。
「正直なところ、スペインに移籍してしまったのでクロアチア代表に選ばれるか心配していたけれど、代表候補に選ばれてホッとした」とサミールは語る。
サミールのクロアチア代表候補入りを喜ぶ母親のエルシさんと親友のデンチーニョさんは、開幕戦で対戦するクロアチア代表の中にサミールさんの名前が入るよう応援している。エルシさんは息子が得点を決めることも含めて「応援する」と明言してはばからないが、デンチーニョさんは「友達の活躍は願うけど、僕はブラジル人だからね」とやや複雑な心境も覗かせていた。(15日付エスタード紙より)