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マラカナンの悲劇の謎解明=沢田さんが渾身の著書刊行

 「ウルグアイの取材をするためにスペイン語を覚えた。ブラジル人記者でも知らないことが書かれている」。そう語るのは、サッカーライターの沢田啓明さん(58、山口)=サンパウロ市在住=だ。当地在住28年の取材成果として16日に『マラカナンの悲劇 世界サッカー史上最大の敗北』(新潮社、税別1500円)を日本で出版した。
 世界最大のサッカー場マラカナンを建設するなど、万全を期して臨んだはずのW杯ブラジル大会(1950年)。代表チームは順調に快勝を重ねたが、最後の最後でウルグアイ代表に惜敗し、国中が失意に沈んだ。一体なぜ「マラカナンの悲劇(マラカナッソ)」が起きたのか。その謎にこだわり続け、2度目のブラジルW杯直前にようやく解明して上梓した。
 渡伯当時、その試合日7月16日が近づくと、毎年その話題がマスコミで持ちきりになったことから関心を持った。「興味本位で資料を集めだしたら、思いもしないエピソードが満載でのめりこんだ」と振り返る。
 ウルグアイ代表選手が試合後、危険を冒してまで街に出かけて遭遇した心温まる逸話や、セレソン敗戦に潜む政治的要因などを分析し、じっくりと書き綴った。検証をこだわるあまり、ウルグアイにも足を運んで向こう側での評価を調べ、南米にサッカーを伝えたとされるスコットランドのサッカー博物館や、ウルグアイがサッカーの五輪金メダルを獲得したパリ大会(1924年)会場にも足を運んだ。
 「当時と現在で、ほとんど国民性や事情は変わっていない。今回のW杯の行方を占う意味でも、ぜひ読んでほしい」と薦める。当地事情を熟知した沢田さんだからこその記述にあふれた、読み応えのある大河ノンフィクションになっている。関心のある人は日系書店で注文を。