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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(164)

《(お前は俺で、俺はお前だ)》ジョージはアレマンの身体に飛び移った。
 アレマンはそれと同時に転び、打った頭を摩りながら起き上がった。大きなアレマンの身体に慣れないジョージは滑稽な動きになった。
『サイズが合わない身体にジョージさんが困っています。小川羅衆、仮の身体に加わって ジョージさんを助けて下さい』
《お安いごようです。ジョージ、邪魔するぜ》
 小川羅衆もジョージの魂が宿ったアレマンの身体に飛び込んだ。
 ジョージの果敢な行動、小川羅衆のすばしっこい動き、アレマンの頑丈な身体が合併したサイボーグ超霊人が完成した。
 戻りが遅い同僚を心配して別の女が様子を見に混乱した座敷に来た。
 古川記者の報道が始まった。
「金髪の女は救われましたが、またピチピチの女が入って来ました。ああっ! 待ち構えていた森口が女の口を塞ぎ座敷に引きずり込みました。獲物に戯れる猫の様に女を弄んでいます。ああっ、淫らな行為を、それに興味を抱いた悪霊達がどんどん現れてきます。わぁ~ 森口が、眼を覆いたくなるような行為を、わぁ~」
 黒澤和尚が、
「冥界が混乱します」
「黒澤さん、この混乱を他の世界へ移しましょう!」
「別の世界へですか? 場所の移動は私には難しく出来ません。時間的移動であれば何とか出来ると思います」
「次元の違う世界へ移すのですか?」
「そうです。未来は未知の世界で危険ですから過去に送りましょう。小川羅衆や村山羅衆にとっては有利で、森口には不利な時代です」
 古川記者が、
「インディオの時代へ移せば」
「あまり遠くに移すエネルギーがありません」
「せめて百年前に移せないでしょうか。丁度、最初の日本人移住が始まった頃です」
「過去に移すにはどうすればいいのですか?」
「サンパウロへの移動は過去に居た所なので、時間的な歪を利用して出来たのです。ですから、パワーさえ上げれば同じ方法で可能です」
 急に、本堂内が騒がしくなった。
《中嶋和尚! 『故郷』の歌に誘われて第一トメアスからも応援が来ました》
 中嶋和尚と面識のない第一と第二トメアスからも精霊達が集まった。
 黒澤和尚はこの第一と第二トメアスの参加で三倍に膨れ上がった不可視のエネルギーを背にサンパウロの夢幻立体映像を時間的次元の違う世界へ移そうと、『大日如来』に届けとばかりに密教の呪文を唱え始めた。中嶋和尚も見よう見真似で密教の呪文を唱えた。
 三十分後、密教の万能力現象が現れた。
 夢幻立体像のサンパウロの背景が消え、背景全体が次第に緑色に輝き、ジャングルに変わった。
 古川記者が夢幻立体像の有様を本堂に伝えた。
「サンパウロの現場がジャングルに移されたようです。ですが、時代が分りません。あっ、ジャングルの陰に何かが!? あっ、インディオです。悪霊もインディオに気付き・・・」
 『天眼通』の像が見えない後ろの方の精霊達が、
《如何したのだ!》
「悪霊がインディオ達に食らいつき、それを餌に増殖し始めました。状況が悪くなり始めました。ジョージ達の動きもスローモーションです。時間の歪みを通った余韻でしょうか。危ない状況が続いています」
 本堂内は古川記者の生放送に一喜一憂した。
「村山羅衆が捕まりました.小川が助っ人に入り、悪霊達を振り切って、囲いから飛び出しました。ああっ、又、悪霊に取り囲まれ・・・。形勢は五分五分です・・・。女が気を失い・・・。あっ、悪霊達が女に集って変な行為を・・・」
 古川記者の生放送に、中嶋和尚と黒澤和尚は焦った。