先週末、ドイツ系子孫の集住地区、サンパウロ市ブルックリン区で「五月祭り」(Maifesta)があった。春の到来を祝う欧州の祭だが、当地ではドイツ系イベントとして毎年開催されている。来場者数は延べ20万人と多い。小雨にも関わらず、食や民芸品等のバラッカは来場者でひしめきあっていた▼陽気なバグパイプの音が聞こえてきたのでカメラを構えると、民族衣装を着た一行が行進していた。聞くと、スコットランド音楽だという。よく見ると、ビールやソーセージの屋台に加え、ブラジルのパステルやドッセ、天ぷら、シメジなど日本食屋台も入り混じっていて、むしろ多文化祭りだ。日系社会同様、ブラジル社会との融合が進んでいるのだろう。今年のテーマは「国境なき文化の春」▼それでも食はドイツ料理中心。一緒に行ったドイツ人である家人が喜ぶかと思ったら、「あんな市販のソーセージどこでも食べられるし、料理が単調すぎる」と全く食指が動かない様子。県連日本祭りでは喜んで食べていたのを思い出して違いを問うと、「日本祭りは食ブースが充実している。料理の種類の多さが全然違うよ」との返事が返ってきた▼確かにどのバラッカもポテト、ソーセージ、肉もしくはその盛り合わせで、量的には十分すぎる程だが、バリエーションという意味では物足りない。県のブースごとに他にはない郷土料理が味わえるというプレミアム感は、日本祭りには及ばない▼人気のヤキソバに頼らざるを得ない場合もあるかもしれないが、〃舌の里帰り〃を楽しみに待つ日本人がいる限り、日本祭りには「郷土料理を伝える」という原点を守りぬいてほしい。(阿)