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リオ地裁=パイヴァ氏殺害の告発受諾=軍政期軍人がはじめて被告に=「規則を超えた犯罪」と判事=「恩赦法」見直し加速化か

 リオ連邦地裁は26日、軍政下の1971年のルーベンス・パイヴァ元下院議員殺害に関与した容疑の退役軍人5人を告発する連邦警察庁からの起訴状を受諾し、5人が正式に被告となった。これは1979年の恩赦法に護られ、拷問を科した軍人が処罰されなかったこれまでの歴史を変えうるものとして注目されている。27~28日付エスタード紙が報じている。

 同件で被告となったのは、ジョゼ・アントニオ・ベリャム将軍、ルーベンス・パイム・サンパイオ大佐、ライムンド・カンポス大佐、ジュランジール・オクセンドルフ軍曹、ジャシー・オクセンドルフ軍曹(階級はいずれも当時)で、罪状は殺人、死体隠蔽、組織犯罪、証拠隠滅のための不正な操作の四つとなる。
 パイヴァ氏は1971年1月22日、陸軍秘密警察(DOI―Codi)で拷問死したことが昨年2月に真相究明委員会によって証明された。それまでは40数年、その疑惑があったにもかかわらず、公式には「行方不明」とされていた。
 今回のリオ連邦地裁の判断は、これまで軍政時代の軍人を裁いてこなかったブラジルの歴史を変えうるものとして注目されている。1979年8月に施行された「恩赦法」では「恩赦の対象は政府や軍関係者にも及ぶ」としており、これまでは刑務所内での政治犯に対する拷問も咎めを受けてこなかった。
 この件に関してはブラジルの司法も見直しに消極的だった。2010年4月には連邦最高裁、11年6月には国家総弁護庁がそれぞれ恩赦法の見直しを行なわないとの判断を下していた。その判断の理由は「恩赦法は民政復帰後に、軍人、民衆の双方が協調して決めた法」であることだった。
 だが今回、連邦検察庁の起訴を受諾したカイオ・マルシオ・グテレス・タラント判事の見解はそれらとは全く異なる。同判事は、パイヴァ氏の事件は恩赦法が規定する範囲を超えていると判断した。「軍政令第5条は拷問がどの程度軍則に即していたかの判断基準となるが、検察庁からの報告で判断する限り、同件での拷問は規則の範囲を超えている」と同判事は語っている。5被告中2人への殺人容疑は「残虐」「意図的殺害」「抵抗不能な被害者の殺害」の3点を認めたものとなっている。
 このリオ連邦地裁の判断を受け、労働者党(PT)は連邦政府に恩赦法見直しへの圧力をかけはじめた。従来のPTは、ルーラ前大統領もジウマ大統領も軍政時代に投獄経験があるにもかかわらず、「大事なのは裁くことではなく、事実を認識すること」などを理由に積極的な見直しを行なってこなかった。だが、恩赦法に関する見方が変わってきたことや、大統領選挙での対立候補のアエシオ・ネーヴェス氏(民主社会党・PSDB)やエドゥアルド・カンポス氏(ブラジル社会党・PSB)が同法見直しに消極的なことから、PT党内では「大統領選の争点のひとつになる」とする勢力があるという。