【既報関連】国内最大規模の公立大学であるサンパウロ総合大学(USP)が未曾有の経営難に直面している中、連邦政府の私立大生への奨学金給付制度(Prouni)の規則に従えば、同大の学生の10人に6人は学費を徴集される状況にあると2日付フォーリャ紙が報じた。同大の経営難は人件費高騰が主な原因で、人件費が州政府からの補助金額を上回っているため、2012年以降、貯蓄金36億レのうち13億レの持ち出しを余儀なくされている。現在は公立大学の月謝徴収は憲法違反だが、公的資金にも限界があるため、昨今は議論のテーマに上がることが多い。
フォーリャ紙が昨年の新入生の家庭収入のデータから想定したところ、新入生の34・2%は10最賃(7240レ)以上の収入がある家庭出身だった。Prouniの規則ではこれらの学生は奨学金を受けられないが、5~10最賃の家庭出身者(30・9%)は授業料の半額、5最賃未満の家庭出身者(34・9%)は授業料全額分の奨学金を受け取る権利がある。
USPでは、州政府からの補助金が入らないと想定した場合の全学生の学費は月3900レになるが、少なくとも35%の学生はこの金額よりも低い収入の家庭出身だ。この金額は、サンパウロでもエリートが行くと言われる私大Insperの月謝の平均額3260レを上回っている。
USPの学生を前記の規則で分類し、大学院生は奨学金ゼロと想定した場合、全学生8万6800人中、1万8千人が授業料の50%、4万8500人が100%を支払うことになる。学生が支払う月謝の額を、フォーリャ紙の大学ランキングで最も優良な私立大学に選ばれたリオ・カトリック大学(Puc-Rio)の月謝平均額の2600レと想定した場合、USPは年間18億レの収入を得ることになる。
この金額は、同大が昨年州政府から受け取った補助金41億レの44%に値する。州政府からの補助金は同大の主な収入源で、法律では州のICMS(商品流通サービス税)の5%を同大にまわすことになっている。
国内の学術界では、公立校の学費徴収には賛否両論がある。質の高い教育を無料で州民に提供することは州の義務で、学費を徴収すれば低所得者層出身者に扉を閉ざすことになるという意見がある一方、収入が増えれば学生の定員を増やしたり調査研究の質を高めたりできる外、州が他の分野に投資する余裕もできるとの意見もある。
なお、6日付同紙によればサンパウロ州会計監査院(TCE)は今週、USPに対し、1年で人件費が89%も膨らんだ理由や、給与調整や採用の基準の説明を求める通達を出した。支出が規定に反していると判断されれば、会計責任者らには罰金が科され、行政上の不正で裁判になる可能性もある。ちなみに2011年の場合、USPは教職員167人に対して憲法の規定を超えた支払いをしていたことが指摘された。