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借金抱える高齢者増える=親族や銀行による被害拡大=告発する例が少ないのも特徴

 年金や恩給の受給者の購買力はここ数年で実質5・2%向上したが、年金受給者らが抱える負債の額は3年間で27%拡大し、525億レアルから668億レアルになったと22日付フォーリャ紙が報じた。
 年金受給者らが借りる金の伸びは、年金や恩給の受給者数が同期間中に7%増えて4220万人となった事や、公務員への貸付が3・7%伸びたという数字と比べ、異常に高い。中央銀行によれば、2013年に年金受給者らに貸した金額は前年の約2倍の310億レアルだった。大統領府人権局によると、高齢者を利用したり暴行したりしたとの通報の21%は、年金や恩給を狙う〃金銭的な暴力〃だという。
 高齢者の購買力向上は喜ぶべきだが、近年は、自分の金を管理しきれずに借金が膨らむケースの他、子供や孫に頼まれて金を借りる例や、親や祖父母から管理を任されたのを良い事に年金などを悪用する例も多い。
 ここ数年の年金や恩給はインフレを上回る率で調整されているが、それと並行して増えているのが、返済利率が通常より低く、返済額が年金などから天引きされるタイプのローンの利用だ。
 このタイプのローンの利用増加を受け、銀行が躍起になっているのは、受給者が亡くなった時も貸した金を確実に返してもらえるようにするための貸付金保険の勧誘だ。この保険の契約は義務ではないが、銀行から「必要だ」と言われ、断りきれない場合も多い。
 極端な例では、1万レアルを借りて、月利4・9%3千レアルの貸付金保険を契約。この場合、分割払いにした保険金は計8千レアルになり、返済完了までに払う額は計5万レアルとなる。
 意識不明となって集中治療室に居る患者の家族や親族が、銀行からの融資を受けるための書類に拇印を押させようとした例もある。また、50歳の娘は無職で22歳の孫もバイト暮らし。固定収入があるのは73歳の母親だけで、苦労してためた貯金3千レアルを借りた娘は返しもせず、母親がもらう金の半分は借金と新しく買ったテレビのローンで消えていくという例もある。
 78歳のジョアンさんは、「銀行に年金を下ろしに行くのは危ない」という婿に銀行のカードを託したが、1850レアルの年金の一部は冷蔵庫のローンと家の修理で食われ、自分の手元には何も残らないという。
 年金や恩給を第3者に濫用されたり、必要のない保険の契約を強要されたりした人は、報復を恐れたり、家の恥をさらすと考えたりして告発しない事が多いが、大統領府人権局にある100番電話への告発は、2011年の4052件が2013年は1万6800件と4倍に増えている。