サロンフットボールを日本に導入したことなどで知られる札幌大学名誉教授の柴田勗さん(つとむ、81、北海道)がW杯観戦のため、北海道サッカー協会員や指導者など13人を伴い、27回目の来伯をした。6月27日まで約2週間の滞在で日本戦全3試合を現地観戦した同氏は、C組最下位で終えた日本代表に関し、抜本的な育成改革を求めた。
同大サッカー部の監督だった73年ごろからブラジル人留学生を受け入れ、室内サッカー「サロンフットボール」を日本で初めて導入した。『ブラジルサッカー総覧―ブラジルサッカーの歴史から用語まで』(河出書房新社、01年)の著書でも知られる。当地開催が決定した07年から現地観戦を決めていたという。
「在外公館を通じ治安面の注意喚起、デモやストによる危険性が広報されてきたが、ブラジルのことだから大会が始まれば落ち着くだろうと思っていた。予想通り大きな事件もなく進行しているね」とブラジル社会の現状には満足した様子だが、日本代表の成績には表情を曇らす。
「1年前、コンフェデ杯で露呈した守備の修正がついに出来なかった。個人技や心身も一から鍛え直さねば。そのためには育成年代(10代)から指導方針の根本的な見直しが必要。次回ロシア大会まで出直しだ」と悔しさを滲ませながら提言する。
今後に向け「国際大会でも結果を出しているU―17(17歳以下)は最も注目。まずこの世代を世界に通用する集団に育てなければ。16年リオ五輪に臨むU―23(23歳以下)チームは、この世代からも選出される可能性もある。W杯で敗退したフル代表の雪辱を」と期待した。
柴田名誉教授とともに3試合を観戦した北海道サッカー協会の評議員の武部豊樹さん(63)と監事の伊賀猛さん(79、ともに北海道)は、100年に及ぶブラジルサッカー界の歴史に感銘を受けたという。
「パカエンブー競技場やサントスFCのサッカー博物館にも足を運び、偉大な名選手らや優勝杯の数々を目の当たりにした。プロリーグ発足から20年少々の日本と比べると、その差は歴然」と痛感した様子。
「ストリートサッカーで育ったブラジル人選手と、教育管理下に置かれ育った日本人選手。土壇場に強いのはどちらか。日本代表は窮地に弱かった」と底力のなさを問題視した。「そもそもクラブチームが100年間続くこと自体驚き。それだけサッカー文化、情熱が国全体に広がり深く浸透しているのだろう」と感想を述べ、さらなるサッカー文化普及への思いを新たにしたようだ。
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