ブラジル太鼓協会(島田オルランド会長)主催の『第11回ブラジル太鼓選手権大会(Festival Brasileiro de Taiko)』が6日、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市のイベント会場CENFORPEで行われた。28団体約400人が年代別4カテゴリーと、個人で競う大太鼓の全5部門に分かれ優勝を争った。「第17回日本太鼓ジュニアコンクール」(15年3月、長野)の出場権を決めるジュニアの部では、ブラジリアの光太鼓が初優勝。サンパウロ、パラナ州チームの勢いを撥ね退け、喜びを爆発させた。
島田会長は開会式のあいさつに立ち、「開催にご協力頂いた方々に深くお礼申し上げる。ブラジルで太鼓が普及し、これほどまで強く根付いたことをうれしく思う」と話し開演。早速、「生きる太鼓」をテーマにジュニアの部が行なわれ、19団体が日本行きの切符を争った。
光太鼓メンバーの川村堅三さん(16、四世)は「バスで14時間かけやってきた。大会1カ月前は毎日練習の日々。今日の演目では仲間と一つになれた」と舞台直後に振り返る。そのほか懸命に叩く少年少女の姿に、会場は大きな拍手で包まれた。
そして緊張の成績発表。昨年の準優勝チームが悲願の優勝をさらった。光太鼓リーダーの広沢晃さん(25、三世)は、「この幸せは言葉にできない。感無量だ。(なぜ優勝できたかという問いに)他チームとの比較は難しいが、昨年より間違いなく心を一つにできた」と涙を拭った。
号泣していたソノダ・セイジさん(17、三世)は、「決してあきらめなかった。目標に向かってひたすら練習を積んだ。練習を重ねる最中には、日本のばあちゃんに病気が見つかった。良くなるようにと願いを込めて叩いた。これでばあちゃんの前で披露できるかも」と、人目もはばからず泣き崩れた。
元JICAシニアボランティアの太鼓指導員で特別審査員を務めた箕輪敏泰さんは、「これまで以上の努力が必要。なんといってもセレソンとして国を背負うことになるからね」とエール。友人・家族と抱き合って喜びを爆発させる光景を前に、「ブラジル人の感情表現は日本人よりも大きい。感動の仕方が全く違う」ともらい涙で栄光を称えた。
各部優勝は以下のとおり(敬称略)。【ミリン(12歳未満)】前進太鼓(パラナ州カスカベル) 【ジュニア(12~17歳)】光太鼓(ブラジリア) 【マスター(40歳以上)】光嵐太鼓(スザノ) 【リーブリ(年齢無制限)】団体フェニックス(プレシデンテ・プルデンテ) 【大太鼓】ギリェルメ・デ・オリヴェイラ・トミシマ(団体フェニックス) 【特別賞】シンチア・アリッサ・オカダ(光太鼓)
大会初出場5団体も奮起=カスカベルはタイトル奪取
今大会にはドラセーナの清心太鼓、リンスの竜火太鼓、バレットスの飛竜太鼓、ブラガンサ・パウリスタの青空太鼓、協会加盟1年というパラナ州カスカベルの前進太鼓が初出場。前進太鼓に息子が通う猪俣美和子さん(38、二世)は、「学校のないときはいつでも太鼓。休日も旅行など行かず家族総出で臨んだ」と、大会にかける意気込みを話した。
熱い視線を送るステージにはその息子チアゴくんの姿が。初舞台に緊張の中、ジュニアの部で大きなミスもなく立派にやり遂げた。「全てうまくいって感動の出来。女の子は幕が閉じたあと号泣していたよ。男の子は我慢したけどね」と笑って話せば、父兄代表の植田勝秀さん(41、二世)も、「緊張した様子は見ていて伝わってきた。この3カ月半は週末ずっと練習漬けだったから、本番での重圧も相当だったはず。テーマに沿った素晴らしい演目をやりきってくれた」と、親子共々充実の表情を見せた。
チームはミリンの部で見事優勝。審査員の箕輪さんも、「優勝チームは素晴らしい出来だった。確かな実力を見せてくれた」と祝福した。