米国議会が1月に承認し、2月から発効となった農業法により、ブラジルの農産物輸出は2014~18年の5年間で43億4千万ドルの損失を被る可能性があると27日付エスタード紙が報じた。
米国の農業法は5年毎に改正され、従来のものは2012年に期限が切れた後、2013年9月まで延長されていた。最新の法律は1月に議会で承認され、2月7日にオバマ大統領の裁可を受けて成立した。
この法律には農家に対する補助金や作物保険などの規定もあり、14~18年の予算額は645億ドルに上る。今回の法律には、従来から補助対象だった棉などに加え、大豆に対する補助金の支払いも盛り込まれ、ブラジルの関係者を驚かせた。
米国の農業法改正でブラジル農業界にどのような影響が出るかをまとめたのは、全国農牧連合(CNA)の依頼を受けたコンサルタント会社のアグロイコネだ。同社の『米国と欧州の農業政策によるブラジル農業界へのインパクト』と題する研究は、ブラジルが世界貿易機関(WTO)で起こした米国による棉の生産に対する補助金に対する訴訟問題の裏づけともなった。
CNAによると、米国の新農業法による大豆とトウモロコシ、棉の生産への補助金支払いは、同国での各作物の増産とそれに伴うコモディティ価格の低下などを招き、ブラジル産の農産物の輸出額は43億4千万ドル減少するという。
産物毎の損失額を具体的に見ると、大豆の輸出は年平均で4億8千万ドル、14~18年の5年間では25億ドル減額となる見込みだ。これは、大豆の国際価格が2~4%(平均3%)下がると見られるためだ。
トウモロコシ価格も3~5%(平均4%)下がると見られ、5年間で15億ドル(年平均で2億8千万ドル)の損失が出る見込みだ。棉の場合は3・7~4・3%の価格低下が見込まれ、輸出額は3億4千万ドル(年平均で7千万ドル)減ると見られている。
ブラジルの関係者は、生産量世界一を争う大豆や、昨年は米国にも輸出したトウモロコシが農業法の補助対象に入った事を不満とし、外交筋を通して抗議する予定だが、外交手段で解決出来ない場合はWTOに訴える意向も示している。
他方、1~2月のブラジル産大豆の輸出で80%を占めた中国でも、鳥インフルエンザ流行などで餌となるつぶし大豆も含めた大豆輸入が減少中。今月始めには買い入れ契約のキャンセルも起き、ブラジル産大豆の輸出に大きな影響を及ぼしている。
中国の需要減少は4月に輸出される大豆の大幅減量を招いており、全伯の港で積み込みの日時が決まっている大豆は280万トン。480万トンだった昨年同月比40%減だ。また、日付などが未確定のラインアップと呼ばれる輸出量も、昨年4月の870万トンを大幅に下回る530万トン程度の見込みだ。
経済界では、国内の干ばつや水害の他、ウクラニアの一部だったクリミア統合で起きたロシアへの制裁の動きによって起こりうる世界規模の影響を懸念する声もあり、今後の行方が注目される。